「青字=解答」・「※赤字=注意書き、解説等」
問題はこちら宇治拾遺物語『小野篁広才の事』問題1
今は昔、小野篁といふ人①おはしけり。
嵯峨の帝の御時に、②内裏に札を立てたりけるに、無悪善と書きたりけり。
帝、篁に、「読め」と仰せられたりければ、
「読みは読み候ひな③ん。されど、恐れにて候へば、④え申し候はじ」と⑤奏しければ、
「ただ⑥申せ」と、たびたび仰せられければ、
「⑦さがなくてよからんと申して候ふぞ。されば、君を呪ひ参らせて⑧候ふなり」と申しければ、
「⑨おのれ放ちては、たれか書かん」と仰せ⑩られければ、
「⑪さればこそ、申し候はじとは申して候ひつれ」と申すに、
帝、「さて、なにも書きたら⑫んものは、⑬読みてんや」と仰せられければ、
「何にても、読み候ひ⑭なん」と申しければ、
片仮名のね文字を十二書かせ給ひて、「読め」と仰せられければ、
「猫の子の子猫、獅子の子の子獅子」と読みたりければ、
帝、ほほゑませたまひて、事なくてやみにけり。
問題1.「②内裏」の漢字の読みを答えよ。
②だいり(うち)
問題2.③ん、⑩られ、⑫ん、⑭な、の助動詞の文法的意味として、「ア~ス」の記号から適当なものを一つ選んで答えよ。
ア.推量 イ.意志 ウ.勧誘 エ.婉曲 オ.完了 カ.強意 キ.受身 ク.尊敬 ケ.自発 コ.可能
③イ.意志
⑩ク.尊敬
⑫エ.婉曲
⑭カ.強意
問題3.①おはし、⑤奏し、⑥申せ、⑧候ふ、の敬語の種類(尊敬・謙譲・丁寧のどれか)と誰から誰に対しての敬意の表現であるかを、例にならって答えよ。
単語 |
敬語の種類 |
誰から |
誰に対して |
(例)仰す |
尊敬語 |
作者 |
天皇 |
①おはす |
尊敬語 |
作者 |
小野篁 |
⑤奏し |
謙譲語 |
作者 |
天皇 |
⑥申せ |
謙譲語 |
天皇 |
天皇 |
⑧候ふ |
丁寧語 |
小野篁 |
天皇 |
※敬語はすべて使った人間からの敬意である。
尊敬語は動作の主体を敬う
謙譲語は動作の対象を敬う
丁寧語はその言葉の受け手を敬う。つまり、地の文なら読者、話しことばなら聞き手を敬う。
問題4.「④え申し候はじ」、「⑦さがなくてよからん」、「⑨おのれ放ちては、たれか書かん」、「⑪さればこそ、申し候はじとは申して候ひつれ」、「⑬読みてんや」、の現代語訳を答えよ。
④申し上げることはできません
⑦嵯峨(天皇)がいなければよいだろう
⑨お前を除いては、誰が書くだろうか。(いや、お前しか書くやつはいない。)
⑪だからこそ、(私は天皇にそのようなことを)申し上げることはできませんと(私は)申したのでございます。
⑬確かに読めるのか
問題5. 「子」の読みをひらがなで三通り答えよ。
「 こ 」 「 ね 」 「 し 」