「黒=原文」・「赤=解説」・「青=現代語訳」
作者:在原業平(ありわらのなりひら)
渚院にて桜をよめる
世の中に 絶えて桜の なかりせば 春の心は のどけからまし
絶え=ヤ行下二段動詞「絶ゆ」の連用形
なかり=形容詞「無し」の連用形
せ=過去の助動詞「き」の未然形、接続は連用形。ここでは「せば~まし」という反実仮想として使われている。
まし=反実仮想の助動詞「まし」の終止形、接続は未然形
ば=接続助詞、直前に未然形がくると仮定条件の意味であるが、ここは反実仮想
のどけから=形容詞「のどけし」の未然形。のどかである、穏やかである
もしもこの世に桜というものがなかったならば、春の人々の心はのどかであっただろう。
※反実仮想=事実とは反する仮定(仮想)を表す。「ましかば~まし」、「せば~まし」と言う形で使われ、「もし~ならば、~だろう」というふうに訳す。