古今和歌集「秋来ぬと目にはさやかに~」解説・品詞分解・現代語訳

「黒=原文」・「赤=解説」「青=現代語訳」
作者:藤原敏行(ふじわらのとしゆき)
秋立つ日よめる

秋来ぬと  目にはさやかに  見えねども  風の音にぞ  おどろかれぬる


来(き)=カ変動詞「来(く)」の連用形。直後に接続が連用形である完了の助動詞「ぬ」があるため連用形だと判断して、「来(き)」と読むことが分かる。

ぬ=完了の助動詞「ぬ」の終止形、接続は連用形。「ぬ」がある所が文末であり、この「ぬ」は終止形だと分かるので、打消の助動詞「ず」の連体形の「ぬ」ではないと判断できる。

さやかに=形容動詞「さやかなり」の連用形。はっきりしている、明瞭である

見え=ヤ行下二段動詞「見ゆ」の未然形。見える、感じられる

ね=打消の助動詞「ず」の已然形、接続は未然形。直後に接続が已然形の接続助詞「ども」があり、この「ね」は已然形だと分かるので、完了の助動詞「ぬ」の命令形ではないと分かる。

ども=逆接の接続助詞

ぞ=強調の係助詞、結びは連体形となる。係り結び。

おどろか=カ行四段動詞「おどろく」の未然形。はっとして気づく、びっくりする、目が覚める

れ=自発の助動詞「る」の連用形、接続は未然形。「~せずにはいられない・自然と~される」。直前に心情動詞や知覚動詞が来ると「自発」になる可能性が高い。
心情動詞=思ふ、笑ふ、泣くなど
知覚動詞=驚く、見る、知る

ぬる=完了の助動詞「ぬ」の連体形、接続は連用形。文末なのに終止形でなく連体形なのは、係助詞「ぞ」があり、係り結びになっているため。

「秋が来た。」と、目にははっきり見えないけれども、風の音で、はっと気づかずにはいられなかった。


『古今和歌集』まとめ