「黒=原文」・「赤=解説」・「青=現代語訳」
原文・現代語訳のみはこちら竹取物語『天の羽衣・かぐや姫の昇天』現代語訳(1)
立て=タ行四段動詞「立つ」の已然形、立つ、起立する。「立つ」はタ行下二段動詞でもあり、その時は「立てる、立たせる」という意味になる
る=存続の助動詞「り」の連体形、接続はサ変なら未然形・四段なら已然形
人ども=名詞
は=係助詞
装束(しょうぞく)=名詞、衣服、服装、恰好。支度、用意。飾り。
の=格助詞
きよらなる=ナリ活用の形容動詞「清らなり」の連体形
こと=名詞
もの=名詞
に=格助詞
も=係助詞
似=ナ行上一段動詞「似る」の未然形。上一段活用の動詞は「{ ひ・い・き・に・み・ゐ } る」
ず=打消の助動詞「ず」の終止形、接続は未然形
飛ぶ車=名詞
一つ=名詞
具し=サ変動詞「具す(ぐす)」の連用形、引き連れる、一緒に行く、伴う。持っている。
たり=存続の助動詞「たり」の終止形、接続は連用形
羅蓋(らがい)=名詞
さし=サ行四段動詞「差す」の連用形
たり=存続の助動詞「たり」の終止形、接続は連用形
立てる人どもは、装束のきよらなること、ものにも似ず。飛ぶ車一つ具したり。羅蓋さしたり。
(空中に)立っている人たちは、衣装が華やかで美しいことは、比べるものがない。空を飛ぶ車を一台用意している。(車には)薄絹を張った傘をさしかけてある。
そ=代名詞
の=格助詞
中=名詞
に=格助詞
王=名詞
と=格助詞
おぼしき=シク活用の形容詞「おぼし」の連体形、思われる、見受けられる
人=名詞
家=名詞
に=格助詞
造麻呂(みやつこまろ)=名詞
まうで来(こ)=カ変動詞「まうで来(く)」の命令形、「来」の謙譲語、動作の対象である王とおぼしき人を敬っている。王と思しき人からの敬意である。自尊敬語
と=格助詞
言ふ=ハ行四段動詞「言ふ」の連体形
に=接続助詞
猛く=ク活用の形容詞「猛し(たけし)」の連用形
思ひ=ハ行四段動詞「思ふ」の連用形
つる=完了の助動詞「つ」の連体形、接続は連用形
造麻呂=名詞
も=係助詞
もの=名詞
に=格助詞
酔ひ=ハ行四段動詞「酔ふ」の連用形
たる=完了の助動詞「たり」の連体形、接続は連用形
心地=名詞
し=サ変動詞「す」の連用形、する。
て=接続助詞
うつ伏し=名詞
に=格助詞
伏せ=サ行四段動詞「伏す」の已然形
り=完了の助動詞「り」の終止形、接続はサ変なら未然形・四段なら已然形
その中に、王とおぼしき人、家に、「造麻呂、まうで来。」と言ふに、猛く思ひつる造麻呂も、ものに酔ひたる心地して、うつぶしに伏せり。
その中に王と思われる人が、家に向かって、「造麻呂、出て参れ。」と言うと、意気込んでいた造麻呂も、何かに酔った気分になって、うつ伏せに伏した。
※造麻呂(みやつこまろ)=かぐや姫の育ての親である翁(おきな)
いはく=名詞
汝(なんぢ)=名詞
幼き=ク活用の形容詞「幼し」の連体形
人=名詞
いささかなる=ナリ活用の形容動詞「いささかなり」の連体形
功徳(くどく)=名詞
を=格助詞
翁(おきな)=名詞
作り=ラ行四段動詞「作る」の連用形
ける=過去の助動詞「けり」の連体形、接続は連用形
に=格助詞
より=ラ行四段動詞「よる」の連用形
て=接続助詞
汝(なんぢ)=名詞
が=格助詞
助け=名詞
に=格助詞
と=格助詞
て=接続助詞
かた時=名詞
の=格助詞
ほど=名詞
と=格助詞
て=接続助詞
下し=サ行四段動詞「下す」の連用形
し=過去の助動詞「き」の連体形、接続は連用形
を=接続助詞
いはく、「汝、幼き人。いささかなる功徳を、翁つくりけるによりて、汝が助けにとて、かた時のほどとて下ししを、
(その王と思しき人が)言うには、「お前、愚かな者よ。わずかばかりの善行を、翁が積んだので、お前の助けにと、ほんのわずかな期間と思って(かぐや姫を下界である地上へ)下したが、
そこら=副詞、多く、たくさん
の=格助詞
年ごろ=名詞、長年、長い間
そこら=副詞、多く、たくさん
の=格助詞
黄金(こがね)=名詞
賜ひ=ハ行四段動詞「賜ふ」の連用形。「与ふ」の尊敬語。天がお与えになったということ。王とおぼしき人が天を敬っている。
て=接続助詞
身=名詞
を=格助詞
変へ=ハ行下二段動詞「変ふ」の連用形
たる=完了の助動詞「たり」の連体形、接続は連用形
が=格助詞
ごと=比況の助動詞「ごとし」の語幹。~のように
なり=ラ行四段動詞「成る」の連用形
に=完了の助動詞「ぬ」の連用形、接続は連用形
たり=完了の助動詞「たり」の終止形、接続は連用形
そこらの年ごろ、そこらの黄金賜ひて、身を変へたるがごとなりにたり。
長年の間、(天が翁に)多くの黄金をお与えになり、別人に変ったように(裕福に)なった。
かぐや姫=名詞
は=係助詞
罪=名詞
を=格助詞
作り=ラ行四段動詞「作る」の連用形
たまへ=補助動詞ハ行四段「給ふ(たまふ)」の已然形、尊敬語。動作の主体(罪を作った人)であるかぐや姫を敬っている。
り=完了の助動詞「り」の連用形、接続はサ変なら未然家・四段なら已然形
けれ=過去の助動詞「けり」の已然形、接続は連用形
ば=接続助詞、直前が已然形だから①原因・理由「~なので、~から」②偶然条件「~ところ・~と」③恒常条件「(~する)といつも」のどれかであるが、文脈判断をして①の意味でとる。ちなみに、直前が未然形ならば④仮定条件「もし~ならば」である。
斯く(かく)=副詞、このように、こう
賤しき=シク活用の形容詞「賤し・卑し(いやし)」の連体形
おのれ=代名詞
が=格助詞
もと=名詞
に=格助詞
しばし=副詞
おはし=サ変動詞「おはす」の連用形、「あり・居り・行く・来」の尊敬語。いらっしゃる、おられる、あおりになる。動作の主体であるかぐや姫を敬っている。
つる=完了の助動詞「つ」の連体形、接続は連用形
なり=断定の助動詞「なり」の終止形、接続は体言・連体形
かぐや姫は罪をつくりたまへりければ、かく賤しきおのれがもとに、しばしおはしつるなり。
かぐや姫は罪をお作りになったので、このように身分の賤しいお前のもとに、しばらくの間いらっしゃったのである。
罪=名詞
の=格助詞
限り=名詞
果て=タ行下二段動詞「果つ」の連用形、終わる、終わりになる
ぬれ=完了の助動詞「ぬ」の已然形、接続は連用形
ば=接続助詞、直前が已然形だから①原因・理由「~なので、~から」②偶然条件「~ところ・~と」③恒常条件「(~する)といつも」のどれかであるが、文脈判断をして①の意味でとる。ちなみに、直前が未然形ならば④仮定条件「もし~ならば」である。
斯く(かく)=副詞、このように、こう
迎ふる=ハ行下二段動詞「迎ふ」の連体形
を=格助詞
翁(おきな)=名詞
は=係助詞
泣き嘆く=カ行四段動詞「泣き嘆く」の終止形
罪の限り果てぬれば、かく迎ふるを、翁は泣き嘆く。
罪を償う期限が終わったので、こうして迎えるのをお前は泣いて嘆き悲しむ。
あたは=ハ行四段動詞「能ふ(あたふ)」の未然形、(たいてい下に打消しを伴って)できる
ぬ=打消の助動詞「ず」の連体形、接続は未然形
こと=名詞
なり=断定の助動詞「なり」の終止形、接続は体言・連体形
はや=副詞
返し=サ行四段動詞「返す」の連用形
たてまつれ=補助動詞ラ行四段「奉る」の命令形、謙譲語。動作の対象である天人を敬っている。自尊敬語
と=格助詞
言ふ=ハ行四段動詞「言ふ」の終止形
あたはぬことなり。はや返したてまつれ。」と言ふ。
(それでも、かぐや姫を引きとめることは)できないことだ。早くお返しなさい。」と言う。
翁=名詞
答へ=ハ行下二段動詞「答ふ」の連用形
て=接続助詞
申す=サ行四段動詞「申す」の連体形、「言ふ」の謙譲語。動作の対象(言われる人)である天人を敬っている
かぐや姫=名詞
を=格助詞
養ひ=ハ行四段動詞「養ふ」の連用形
たてまつる=補助動詞ラ行四段「奉る」の連体形、謙譲語。動作の対象であるかぐや姫を敬っている。
こと=名詞
二十余年=名詞
に=格助詞
なり=ラ行四段動詞「成る」の連用形
ぬ=完了の助動詞「ぬ」の終止形、接続は連用形
翁答へて申す、「かぐや姫を養ひたてまつること二十余年になりぬ。
翁が答えて申し上げるには、「かぐや姫を養い申し上げること二十年あまりになりました。
かた時=名詞
と=格助詞
のたまふ=ハ行四段動詞「のたまふ(宣ふ)」の連体形。「言ふ」の尊敬語。おっしゃる。動作の主体である天人を敬っている。
に=接続助詞
あやしく=シク活用の形容詞「怪し(あやし)」の連用形
なり=ラ行四段動詞「成る」の連用形
はべり=補助動詞ラ変「侍り(はべり)」の連用形、丁寧語。言葉の受け手(聞き手)である天人を敬っている。敬語を使った翁からの敬意。
※「候ふ・侍り(はべり)」は補助動詞だと丁寧語「~です、~ます」の意味であるが、本動詞だと、丁寧語「あります、ございます、おります」と謙譲語「お仕え申し上げる、お控え申し上げる」の二つ意味がある。
※補助動詞=用言などの直後に置いて、その用言に少し意味を添えるように補助する動詞。英語で言う助動詞「canやwill」みたいなもの。
※本動詞=単体で意味を成す動詞、補助動詞ではないもの。
英語だと、「need」には助動詞と通常の動詞としての用法があるが、「候ふ・侍り」も意味は違うがこれみたいなもの
ぬ=完了の助動詞「ぬ」の終止形、接続は連用形
『かた時』とのたまふに、あやしくなりはべりぬ。
(それなのにあなたは)『かた時(わずかな期間)』とおっしゃるので、疑問に思いました。
また=副詞
異所(ことどころ)=名詞
に=格助詞
かぐや姫=名詞
と=格助詞
申す=サ行四段動詞「申す」の連体形、「言ふ」の謙譲語
人=名詞
ぞ=強調の係助詞、結びは連体形となる。係り結び。
おはす=サ変動詞「おはす」の終止形、「あり・居り・行く・来」の尊敬語。いらっしゃる、おられる、あおりになる。動作の主体であるかぐや姫を敬っている。
らむ=現在推量の助動詞「らむ」の連体形、接続は終止形(ラ変なら連体形)。係助詞「ぞ」を受けて連体形となっている。係り結び。
と=格助詞
言ふ=ハ行四段動詞「言ふ」の終止形
また異所にかぐや姫と申す人ぞおはすらむ。」と言ふ。
また別の所にかぐや姫と申す人がいらっしゃるのでしょう。」と言う。
ここ=代名詞
に=格助詞
おはする=サ変動詞「おはす」の連体形、「あり・居り・行く・来」の尊敬語。いらっしゃる、おられる、あおりになる。動作の主体であるかぐや姫を敬っている。
かぐや姫=名詞
は=係助詞
重き=ク活用の形容詞「重し」の連体形
病=名詞
を=格助詞
し=サ変動詞「す」の連用形、する。
たまへ=補助動詞ハ行四段「給ふ(たまふ)」の已然形、尊敬語。動作の主体であるかぐや姫を敬っている。
ば=接続助詞、直前が已然形だから①原因・理由「~なので、~から」②偶然条件「~ところ・~と」③恒常条件「(~する)といつも」のどれかであるが、文脈判断をして①の意味でとる。ちなみに、直前が未然形ならば④仮定条件「もし~ならば」である。
え=副詞、下に打消の表現を伴って「~できない」
出で=ダ行下二段動詞「出づ」の連用形
おはします=サ行四段動詞「おはします」の終止形。「おはす」より敬意が高いもの。動作の主体であるかぐや姫を敬っている。
まじ=打消推量の助動詞「まじ」の終止形、接続は終止形(ラ変なら連体形)
と=格助詞
申せ=サ行四段動詞「申す」の已然形、「言ふ」の謙譲語。動作の対象(言われる人)である天人を敬っている。
ば=接続助詞、直前が已然形であり、②偶然条件「~ところ・~と」の意味で使われている
そ=代名詞
の=格助詞
返りごと=名詞
は=係助詞
なく=ク活用の形容詞「無し」の連用形
て=接続助詞
「ここにおはするかぐや姫は、重き病をしたまへば、え出でおはしますまじ。」と申せばその返りごとはなくて、
「ここにいらっしゃるかぐや姫は、重い病気にかかっていらっしゃるので、出ていらっしゃることができないでしょう。」と(翁が)申し上げると、その返事はなくて、
屋(や)=名詞
の=格助詞
上=名詞
に=格助詞
飛ぶ車=名詞
を=格助詞
寄せ=サ行下二段動詞「寄す」の連用形
て=接続助詞
いざ=感動詞
かぐや姫=名詞
穢き=ク活用の形容詞「穢し(きたなし)」の連体形
所=名詞
に=格助詞
いかで=副詞、(反語で)どうして
か=反語の係助詞、結びは連体形となる。係り結び
久しく=ク活用の形容詞「久し」の連用形
おはせ=サ変動詞「おはす」の未然形、「あり・居り・行く・来」の尊敬語。いらっしゃる、おられる、あおりになる。動作の主体であるかぐや姫を敬っている。
む=意志の助動詞「む」の連体形、接続は未然形。係助詞「か」を受けて連体形となっている。係り結び。この「む」は、㋜推量・㋑意志・㋕勧誘・㋕仮定・㋓婉曲の五つの意味があるが、文末に来ると「㋜推量・㋑意志・㋕勧誘」のどれかである。
と=格助詞
言ふ=ハ行四段動詞「言ふ」の終止形
屋の上に飛ぶ車を寄せて、「いざ、かぐや姫、穢き所に、いかでか久しくおはせむ。」と言ふ。
屋根の上に空飛ぶ車を寄せて、「さあ、かぐや姫、けがれたところに、どうして長い間いらっしゃるのですか。(帰りましょう。)」と言う。
立て籠め=マ行下二段動詞「立て籠む(たてこむ)」の連用形
たる=完了の助動詞「たり」の連体形、接続は連用形
所=名詞
の=格助詞
戸=名詞
すなはち=副詞
ただ=副詞
開き=カ行四段動詞「開く(あく)」の連用形
に=格助詞、強調。同じ動作を重ねて強調する。
「斬りに斬りけり。」→「めった斬りにした。」
「泣きに泣き、」→「とにかく泣き、」
開き=カ行四段動詞「開く」の連用形
ぬ=完了の助動詞「ぬ」の終止形、接続は連用形
立て籠めたる所の戸、すなはちただ開きに開きぬ。
(すると、不思議なことに、)閉めていた部屋の戸が、すぐにすっかり開いてしまった。
格子ども=名詞
も=係助詞
人=名詞
は=係助詞
なく=ク活用の形容詞「無し」の連用形
して=接続助詞
開き=カ行四段動詞「開く」の連用形
ぬ=完了の助動詞「ぬ」の終止形、接続は連用形
嫗(おうな)=名詞
抱き=カ行四段動詞「抱く(いだく)」の連用形
て=接続助詞
ゐ=ワ行上一段動詞「居る(ゐる)」の連用形。上一段活用の動詞は「{ ひ・い・き・に・み・ゐ } る」
たる=完了の助動詞「たり」の連体形、接続は連用形
かぐや姫=名詞
外(と)=名詞
に=格助詞
出で=ダ行下二段動詞「出づ」の連用形
ぬ=完了の助動詞「ぬ」の終止形、接続は連用形
格子どもも、人はなくして開きぬ。嫗(おうな)抱きてゐたるかぐや姫、外に出でぬ。
格子なども、人がいないのに開いてしまった。媼(お婆さん)が抱いていたかぐや姫は、外に出てしまった。
え=副詞、下に打消の表現を伴って「~できない」
とどむ=マ行下二段動詞「止む・留む・停む(とどむ)」の終止形
まじけれ=打消推量の助動詞「まじ」の已然形、接続は終止形(ラ変なら連体形)。「不可能の予測」という意味でも良いかもしれない。
ば=接続助詞、直前が已然形だから①原因・理由「~なので、~から」②偶然条件「~ところ・~と」③恒常条件「(~する)といつも」のどれかであるが、文脈判断をして①の意味でとる。ちなみに、直前が未然形ならば④仮定条件「もし~ならば」である。
ただ=副詞
さし仰ぎ=ガ行四段動詞「さし仰ぐ」の連用形。「さし」は接頭語であり、あまり気にしなくて良い。
て=接続助詞
泣き=カ行四段動詞「泣く」の連用形
をり=ラ変動詞「居り(をり)」の終止形
えとどむまじければ、たださし仰ぎて泣きをり。
(媼は)とどめることが出来そうもないので、ただ(かぐや姫を)仰ぎ見て泣いている。
竹取=名詞
心=名詞
惑ひ=ハ行四段動詞「惑ふ」の連用形
て=接続助詞
泣き伏せ=サ行四段動詞「泣き伏す」の已然形
る=存続の助動詞「り」の連体形、接続はサ変なら未然形・四段なら已然形
所=名詞
に=格助詞
寄り=ラ行四段動詞「寄る」の連用形
て=接続助詞
かぐや姫=名詞
言ふ=ハ行四段動詞「言ふ」の連体形
竹取心惑ひて泣き伏せる所に寄りて、かぐや姫言ふ、
竹取の翁が心を乱しているところに近寄って、かぐや姫が言うことには、
ここ=代名詞、私、ここ、あなた
に=格助詞
も=係助詞
心=名詞
に=格助詞
も=係助詞
あら=ラ変動詞「あり」の未然形
で=打消の接続助詞、接続は未然形。「ず(打消しの助動詞)+して(接続助詞)」→「で」となったもの。
斯く(かく)=副詞、このように、こう
まかる=ラ行四段動詞「まかる」の連体形、謙譲語。退出する。参る。
に=接続助詞
昇ら=ラ行四段動詞「昇る」の未然形
む=婉曲の助動詞「む」の連体形、接続は未然形。この「む」は、㋜推量・㋑意志・㋕勧誘・㋕仮定・㋓婉曲の五つの意味があるが、文中に来ると「㋕仮定・㋓婉曲」のどれかである。
を=格助詞
だに=副助詞、強調:(せめて)~だけでも。類推:~さえ
見送り=ラ行四段動詞「見送る」の連用形
たまへ=補助動詞ハ行四段「給ふ(たまふ)」の命令形、尊敬語。動作の主体である竹取の夫妻を敬っている
と=格助詞
言へ=ハ行四段動詞「言ふ」の已然形
ども=逆接の接続助詞、活用語の已然形に付く。接続助詞「を・に・ば・ど・も・ども・が」があるとその後に続く文章において主語が変わる可能性がある。読点の直前に「をにばばどもが」の文字のどれかがあれば主語が変わるかもしれないと思えばよい。
「ここにも心にもあらでかくまかるに、昇らむをだに見送りたまへ。」と言へども、
「私においても、心ならずもこのように(月の世界に)帰るのですから、せめて空へ昇るのを見送りなさってください。」と言うけれども、
何為に(なにしに)=副詞、(反語で)どうして~か(。いや、ない)。なんのために。
悲しき=シク活用の形容詞「悲し」の連体形
に=接続助詞
見送り=ラ行四段動詞「見送る」の連用形
たてまつら=補助動詞ラ行四段「奉る」の未然形、謙譲語。動作の対象であるかぐや姫を敬っている。
む=意志の助動詞「む」の終止形、接続は未然形。この「む」は、㋜推量・㋑意志・㋕勧誘・㋕仮定・㋓婉曲の五つの意味があるが、文末に来ると「㋜推量・㋑意志・㋕勧誘」のどれかである。
我=代名詞
を=格助詞
いかに=副詞、どんなに、どう。
せよ=サ変動詞「す」の命令形。する
と=格助詞
て=接続助詞
捨て=タ行下二段動詞「捨つ」の連用形
て=接続助詞
は=係助詞
昇り=ラ行四段動詞「昇る」の連用形
たまふ=補助動詞ハ行四段「給ふ(たまふ)」の連体形、尊敬語。動作の主体であるかぐや姫を敬っている
ぞ=係助詞。問いただす意味で使われている。
「なにしに悲しきに見送りたてまつらむ。我をいかにせよとて、捨てては昇りたまふぞ。
(翁は)「どうして悲しいのにお見送り申し上げようか。私をどのようにしろと言って、見捨てて昇天なさるのですか。
具し=サ変動詞「具す(ぐす)」の連用形、引き連れる、伴う。持っている
て=接続助詞
率(ゐ)=ワ行上一段動詞「率る(ゐる)」の連用形。率(ひき)いる、引き連れていく。上一段活用の動詞は「{ ひ・い・き・に・み・ゐ } る」と覚える。
て=接続助詞
おはせ=補助動詞サ変「おはす」の未然形、尊敬語。動作の主体であるかぐや姫を敬っている。
ね=終助詞、~てください、~てほしい
と=格助詞
泣き=カ行四段動詞「泣く」の連用形
て=接続助詞
伏せ=サ行四段動詞「伏す」の已然形
れ=完了の助動詞「り」の已然形、接続はサ変なら未然形・四段なら已然形
ば=接続助詞、直前が已然形であり、①原因・理由「~なので、~から」の意味で使われている。接続助詞「を・に・ば・ど・も・ども・が」があるとその後に続く文章において主語が変わる可能性がある。
御心=名詞
惑ひ=ハ行四段動詞「惑ふ」の連用形
ぬ=完了の助動詞「ぬ」の終止形、接続は連用形
具して率(ゐ)ておはせね。」と泣きて伏せれば御心惑ひぬ。
一緒に連れてお行きになってください。」と泣き伏しているので、(かぐや姫の)お心が乱れてしまった。
文(ふみ)=名詞
を=格助詞
書き置き=カ行四段動詞「書き置く」の連用形
て=接続助詞
まから=ラ行四段動詞「まかる」の未然形、謙譲語。退出する。参る。
む=意志の助動詞「む」の終止形、接続は未然形。この「む」は、㋜推量・㋑意志・㋕勧誘・㋕仮定・㋓婉曲の五つの意味があるが、文末に来ると「㋜推量・㋑意志・㋕勧誘」のどれかである。
恋しから=シク活用の形容詞「恋し」の未然形
む=婉曲あるいは仮定の助動詞「む」の連体形、接続は未然形。この「む」は、㋜推量・㋑意志・㋕勧誘・㋕仮定・㋓婉曲の五つの意味があるが、文中に来ると「㋕仮定・㋓婉曲」のどれかである。
折々=名詞、その時々、そのつど
取り出で=ダ行下二段動詞「取り出づ」の連用形
て=接続助詞
見=マ行上一段動詞「見る」の連用形
たまへ=補助動詞ハ行四段「給ふ(たまふ)」の命令形、尊敬語。動作の主体である竹取の夫妻を敬っている。
と=格助詞
て=接続助詞
うち泣き=カ行四段動詞「うち泣く」の連用形。「うち」は接頭語であまり気にしなくてもよい。
て=接続助詞
書く=カ行四段動詞「書く」の連体形
言葉=名詞
は=係助詞
「文を書き置きてまからむ。恋しからむ折々、取り出でて見たまへ。」とて、うち泣きて書く言葉は、
「手紙を書き残して参りましょう。(私を)恋しく思う折々に、取り出してご覧ください。」と言って、泣いて書く(かぐや姫の手紙の)言葉は、
こ=代名詞
の=格助詞
国=名詞
に=格助詞
生まれ=ラ行下二段動詞「生まる」の連用形
ぬる=完了の助動詞「ぬ」の連体形、接続は連用形
と=格助詞
なら=断定の助動詞「なり」の未然形、接続は体言・連体形
ば=接続助詞、直前が未然形なので④仮定条件「もし~ならば」の意味である。
嘆か=カ行四段動詞「嘆く」の未然形
せ=使役の助動詞「す」の連用形、接続は未然形。「す」には、「使役と尊敬」の二つの意味があるが、直後に尊敬語が来ていない場合は必ず「使役」の意味である。
奉ら=補助動詞ラ行四段「奉る」の未然形、謙譲語。動作の対象である竹取の夫妻を敬っている。
ぬ=打消の助動詞「ず」の連体形、接続は未然形
ほど=名詞
まで=副詞
侍ら=ラ変動詞「侍り(はべり)」の未然形、謙譲語、おそばにいる、お仕え申し上げる。
※「侍り(はべり)」は補助動詞だと丁寧語「~です、~ます」の意味であるが、本動詞だと、丁寧語「あります、ございます、おります」と謙譲語「お仕え申し上げる、おそばにいる」の二つ意味がある。
※補助動詞=用言などの直後に置いて、その用言に少し意味を添えるように補助する動詞。英語で言う助動詞「canやwill」みたいなもの。
※本動詞=単体で意味を成す動詞、補助動詞ではないもの。
英語だと、「need」には助動詞と通常の動詞としての用法があるが、「侍り」も意味は違うがこれみたいなもの
む=意志の助動詞「む」の終止形、接続は未然形。この「む」は、㋜推量・㋑意志・㋕勧誘・㋕仮定・㋓婉曲の五つの意味があるが、文末に来ると「㋜推量・㋑意志・㋕勧誘」のどれかである。
「この国に生まれぬるとならば、嘆かせ奉らぬほどまで侍らむ。
「この国に生まれたというのならば、(あなたを)嘆かせ申し上げないときまでおそばにいるでしょう。
過ぎ=ガ行上二段動詞「過ぐ」の連用形
別れ=ラ行下二段動詞「別る」の連用形
ぬる=完了の助動詞「ぬ」の連体形、接続は連用形
こと=名詞
返す返す=副詞
本意なく=ク活用の形容詞「本意(ほい)なし」の連用形、不本意だ、残念だ。「本意」の意味は「本来の意志・かねてからの願い」
こそ=強調の係助詞、結びは連体形となる。係り結び。
おぼえ=ヤ行下二段動詞「思ゆ(おぼゆ)」の連用形。「ゆ」には受身・自発・可能の意味が含まれており、ここでは「自発」の意味で使われている。「(自然と)思われる」
侍れ=補助動詞ラ変「侍り(はべり)」の已然形、丁寧語。聞き手である竹取の夫妻を敬っている。係助詞「こそ」を受けて已然形となっている。係り結び。
過ぎ別れぬること、返す返す本意なくこそおぼえ侍れ。
(なので、こうして)去り別れてしまうことは、返す返すも残念に思われます。
脱ぎ置く=カ行四段動詞「脱ぎ置く」の連体形
衣(きぬ)=名詞
を=格助詞
形見=名詞
と=格助詞
見=マ行上一段動詞「見る」の連用形
給へ=補助動詞ハ行四段「給ふ」の命令形、尊敬語。動作の主体である竹取の夫妻を敬っている。
月=名詞
の=格助詞
出で=ダ行下二段動詞「出づ」の連用形
たら=存続の助動詞「たり」の未然形、接続は連用形
む=婉曲の助動詞「む」の連体形、接続は未然形。この「む」は、㋜推量・㋑意志・㋕勧誘・㋕仮定・㋓婉曲の五つの意味があるが、文中に来ると「㋕仮定・㋓婉曲」のどれかである。
夜=名詞
は=係助詞
見おこせ=サ行下二段動詞「見遣す(みおこす)」の連用形。こちらを見る。
給へ=補助動詞ハ行四段「給ふ」の命令形、尊敬語。動作の主体である竹取の夫妻を敬っている。
脱ぎ置く衣を、形見と見給へ。月の出でたらむ夜は、見おこせ給へ。
脱いで置いていく衣を私の形見としてご覧ください。月の出ているような夜は、(私のいる月を)ご覧ください。
見捨て=タ行下二段動詞「見捨つ」の連用形
奉り=補助動詞ラ行四段「奉る」の連用形、謙譲語。動作の対象である竹取の夫妻を敬っている。
て=接続助詞
まかる=ラ行四段動詞「まかる」の連体形、謙譲語。退出する。参る。
空=名詞
より=格助詞、(起点)~から。(手段・用法)~で。(経過点)~を通って。(即時:直前に連体形がきて)~するやいなや。
も=係助詞
落ち=タ行上二段動詞「落つ」の連用形
ぬ=強意の助動詞「ぬ」の終止形、接続は連用形。完了・強意の助動詞「つ・ぬ」の直後に推量系統の助動詞(む・べし・らむ・まし)などが来ている時には、強意の意味で使われる。
べき=推量の助動詞「べし」の連体形、接続は終止形(ラ変なら連体形)
心地=名詞
する=サ変動詞「す」の連体形、する
と=格助詞
書き置く=カ行四段動詞「書き置く」の終止形
見捨て奉りてまかる空よりも、落ちぬべき心地する。」と書き置く。
(あなたを)見捨て申し上げて参る空から、(悲しみのあまり)落ちてしまいそうな心地がします。」と書き残す。
続きはこちら竹取物語『天の羽衣・かぐや姫の昇天』品詞分解のみ(2)