青=現代語訳・下小文字=返り点・上小文字=送り仮名・解説=赤字
大道廃レテ、有二リ仁義一。
大道(だいどう)廃(すた)れて、仁義有り。
大いなる道(老子の説く無為自然の道)が衰えると、(儒教で重んじられている)仁義の概念が出てくる。
智慧出デテ、有二リ大偽一。
智慧(ちえ)出(い)でて、大偽(たいぎ)有り。
※「智慧」を学問、人間の努力ととらえ、「大偽」を荀子の説く「礼」ととらえて、荀子を批判しているとも考えられる。
知恵が出てくると、ひどい人為(による秩序・制度)が作られる。
六親不レシテ和セ、有二リ孝慈一。
六親(りくしん)和せずして、孝慈(こうじ)有り。
父母・兄弟・夫婦の仲が悪くなると、親孝行な息子や慈悲深い父などが目立つようになる。
国家昏乱シテ、有二リ忠臣一。
国家昏乱(こんらん)して、忠臣有り。
※忠臣=君主にまごころを尽くして仕える家来
国家が乱れると、忠臣が出現する。
※儒家たちが唱えている仁義などの世俗的道徳は、実は不自然なものであると説いて批判している。