源氏物語『車争ひ』品詞分解のみ(1)

「黒=原文」・「赤=解説」・「青=現代語訳

 源氏物語『車争ひ』まとめ

 

【主な登場人物】

大将殿=光源氏。亡き母(桐壷の更衣)によく似た藤壺の女御に恋心を寄せ続ける青年。元服の際に、左大臣家を光源氏の後ろ盾にと考えた桐壷帝の意向により左大臣家の娘である葵の上と結婚させられるが、年の差などが原因で関係はよくなく、他の女性(空蝉・花散里・六条の御息所・夕顔など)に気持ちを向けていた。いろいろあった後、葵の上の懐妊を機に心を通わせていく。

大殿=葵の上。左大臣家の姫君。本章の「車争ひ」にて六条の御息所に恨まれることとなり、夕霧を出産した後に死亡する。

御息所=六条の御息所。身分・プライドが高く嫉妬心が強いため、生霊をつくってしまい、光源氏と良い関係にある女性(夕顔・葵の上・紫の上)を苦しめる。

 

 

大殿(おおとの)=名詞

=格助詞

=係助詞

かやう=ナリ活用の形容動詞の「かやうなり」の語幹。このよう、かくのごとく。形容動詞の語幹+格助詞「の」=連体修飾語

=格助詞

御歩き=名詞

=係助詞

をさをさ=副詞、(下に打消の語を伴って)すこしも、めったに

=サ変動詞「す」の連用形、する

給は=補助動詞ハ行四段「給ふ」の未然形、尊敬語。動作の主体である葵上を敬っている。

=打消の助動詞「ず」の連体形、接続は未然形

=接続助詞

 

大殿(おおとの)には、かやうの御歩きもをさをさしたまはぬに、

大殿(葵の上)は、このようなお出かけもめったになさらない上に、

 

 

御心地=名詞

さへ=副助詞、添加(~までも)。類推(~さえ)

悩ましけれ=シク活用の形容詞「悩まし」の已然形、気分が悪い、苦しい、つらい

=接続助詞、直前が已然形だから①原因・理由「~なので、~から」②偶然条件「~ところ・~と」③恒常条件「(~する)といつも」のどれかであるが、文脈判断をして①の意味でとる。ちなみに、直前が未然形ならば④仮定条件「もし~ならば」である。

思しかけ=カ行下二段動詞「思しかく」の未然形

ざり=打消の助動詞「ず」の連用形、接続は未然形

ける=過去の助動詞「けり」の連体形、接続は連用形

=接続助詞

 

御心地さへ悩ましければ、思しかけざりけるを、

(妊娠中で)ご気分まで悪いので、(光源氏も参列する御禊(ごけい)の見物のことは)全くお考えもしていなかったが、

 

 

若き=ク活用の形容詞「若し」の連体形

人々=名詞

いでや=感動詞、いやもう、さてまあ

おのがどち=名詞・副詞、自分たち同士、仲間同士。「どち」は接尾語

ひき忍び=バ行上二段動詞「ひき忍ぶ」の連用形

=接続助詞

=マ行上一段動詞「見る」の連用形

侍ら=補助動詞ラ変「侍り(はべり)」の未然形、丁寧語。言葉の受け手(聞き手)である葵の上を敬っている。

※「候ふ・侍り(はべり)」は補助動詞だと丁寧語「~です、~ます」の意味であるが、本動詞だと、丁寧語「あります、ございます、おります」と謙譲語「お仕え申し上げる、お控え申し上げる」の二つ意味がある。

※補助動詞=用言などの直後に置いて、その用言に少し意味を添えるように補助する動詞。英語で言う助動詞「canwill」みたいなもの。

※本動詞=単体で意味を成す動詞、補助動詞ではないもの。

英語だと、「need」には助動詞と通常の動詞としての用法があるが、「候ふ・侍(はべ)り」も意味は違うがこれみたいなもの

=仮定の助動詞「む」の連体形、接続は未然形。この「む」は、㋜推量・㋑意志・㋕勧誘・㋕仮定・㋓婉曲の五つの意味があるが、文中に来ると「㋕仮定・㋓婉曲」のどちらかである。訳:「(もし、)私どもだけでひっそり見物しますとしても、そのようなことは

こそ=強調の係助詞、結びは已然形となる。係り結び

はえなかる=ク活用の形容詞「映え無し」の連体形、見栄えがしない、ぱっとしない、華やかさがない

べけれ=推量の助動詞「べし」の已然形、接続は終止形(ラ変なら連体形)。係助詞「こそ」を受けて已然形となっている。係り結び。

 

若き人びと、「いでや。おのがどちひき忍びて見侍らむこそ、はえなかるべけれ。

若い女房たちが、「いやもう、私どもだけでひっそりと見物しますとしても、そのようなことは見栄えがしないでしょう。

 

 

凡人(おほよそびと)=世間一般の人、特別な関係のない普通の人。

おほよそ=だいたい、普通、一般

だに=副助詞、類推(~さえ・~のようなものでさえ)。強調(せめて~だけでも)。添加(~までも)

今日=名詞

=格助詞

物見=名詞

=格助詞

=係助詞

 

おほよそ人だに、今日の物見には、

(光源氏と)ご縁のない人たちでさえ、今日の物見には、

 

 

大将殿=名詞

=格助詞

こそ=強調の係助詞、結びは已然形となる。係り結び

=係助詞

あやしき=シク活用の形容詞「あやし(賤し)」の連体形、身分が低い。粗末だ、見苦しい。古文では貴族が中心であり貴族にとって庶民は別世界のあやしい者に見えたことから派生

山がつ=名詞、きこりや猟師など、山里に住む身分の低い人

さへ=副助詞、添加(~までも)。類推(~さえ)

=マ行上一段動詞「見る」の連用形

奉ら=補助動詞ラ行四段「奉る(たてまつる)」の未然形、謙譲語。動作の対象(見られる人)である光源氏を敬っている。

=意志の助動詞「む」の終止形、接続は未然形。㋜推量・㋑意志・㋕勧誘・㋕仮定・㋓婉曲の五つの意味があるが、文末に来ると「㋜推量・㋑意志・㋕勧誘」のどれかである。

=格助詞

=サ変動詞「す」の終止形、する。

なれ=伝聞の助動詞「なり」の已然形、接続は終止形(ラ変なら連体形)。係助詞「こそ」を受けて已然形となっている。係り結び。直前に「す(サ変の終止形)」が来ているため接続が体言・連体形である断定・存在の助動詞「なり」のことではない。訳:「(聞いたところによると)~だそうだ」

 

大将殿をこそは、あやしき山がつさへ見奉らむとすなれ。

(まず)大将殿(光源氏)を、卑しい田舎者までが拝見しようとしているそうです。

 

 

遠き=ク活用の形容詞「遠し」の連体形

国々=名詞

より=格助詞、(起点)~から。(手段・用法)~で。(経過点)~を通って。(即時:直前に連体形がきて)~するやいなや。

妻子=名詞

=格助詞

引き具し=サ変動詞「引き具す」の連用形

具す(ぐす)=サ変動詞、引き連れる、伴う。持っている。

つつ=接続助詞

=係助詞

参で来(く)=カ変動詞「参で来(まうでく)」の終止形

なる=伝聞の助動詞「なり」の連体形、接続は終止形(ラ変なら連体形)。伝聞か推定かは基本的に文脈判断。

近くに音声語(音や声などを表す言葉)が無い場合には、「伝聞」の意味になりがち。なぜなら、この「なり」の推定は音を根拠に何かを推定するときに用いる推定だからである。

=接続助詞

 

遠き国々より、妻子を引き具しつつも参で来なるを。

遠い国々から、妻子を引き連れてまでも上京して参って来るそうですのに。

 

 

御覧ぜ=サ変動詞「御覧ず」の未然形、「見る」の尊敬語。動作の対象である葵の上を敬っている。「名詞+す(サ変動詞)」で一つのサ変動詞になるものがいくらかある。例:「音す」、「愛す」、「心す」

=打消の助動詞「ず」の連体形、接続は未然形

=係助詞

いと=副詞

あまり=ナリ活用の形容動詞「あまりなり」の語幹、あんまりだ、ひどい

=係助詞

侍る=ラ変動詞「侍り」の連体形。「あり・居り」の丁寧語。言葉の受け手(聞き手)である葵の上を敬っている。

かな=詠嘆の終助詞

=格助詞

言ふ=ハ行四段動詞「言ふ」の連体形

=格助詞

大宮=名詞

聞こし召し=サ行四段動詞「聞こし召す」の連用形。「聞く」の尊敬語。動作の主体である大宮(葵の上の母)を敬っている。「食ふ・飲む・治む・行ふ」などの尊敬語でもある。

=接続助詞

 

御覧ぜぬは、いとあまりも侍るかな。」と言ふを、大宮聞こし召して、

(それなのに)御覧にならないのは、まったくあんまりでございますよ。」と言うのを、大宮(葵の上の母)がお聞きになって

 

 

御心地=名詞

=係助詞

よろしき=シク活用の形容詞「宜し(よろし)」の連体形、だいたいよい、まあよい。普通だ、平凡だ。「良し」より意味が弱い。「よろし」<「よし」

(ひま)=名詞、隙間、物と物との間。ここでは気分の悪い時期の合い間にある気分の良い時期、病気の絶え間

なり=断定の助動詞「なり」の終止形、接続は体言・連体形

候ふ(さぶらふ)=ハ行四段動詞「候ふ(さぶらふ)」の連体形、お仕え申し上げる、お仕えする。動作の対象である葵の上を敬っている。

人々=名詞

=係助詞

さうざうしげな=ナリ活用の形容動詞「さうざうしげなり」の連体形が音便化して無表記になったもの、「なる」→「なん(音便化)」→「な」。なんとなく物足りない、心寂しい

めり=推定の助動詞「めり」の終止形、接続は終止形(ラ変なら連体形)。

=格助詞

=接続助詞

 

「御心地もよろしき(ひま)なり。(さぶら)ふ人びともさうざうしげなめり。」とて、

「(見たところ、あなたの)ご気分もまあまあよろしい折です。お仕えしている女房達も物足りなさそうです。(なので、見物なさってはいかがですか。)」と言って、

 

 

にはかに=ナリ活用の形容動詞「にはかなり」の連用形、急なさま、突然だ

めぐらし=サ行四段動詞「めぐらす」の連用形、(手紙・文書などを)順に知らせる、触れまわす。まわす、囲ませる

仰せ=サ行下二段動詞「仰す(おほす)」の連用形。「言ふ」の尊敬語、おっしゃる。おそらく動作の主体である大宮(葵の上の母)を敬っている。「給ひ」と合わせて二重敬語になっているため、やはり大宮を敬っていると思われる。

給ひ=補助動詞ハ行四段「給ふ」の連用形、尊敬語

=接続助詞

=マ行上一段動詞「見る」の連用形

給ふ=補助動詞ハ行四段「給ふ」の終止形、尊敬語。動作の主体(見物なさる人)である葵の上を敬っている。

 

にはかにめぐらし仰せ給ひて、見給ふ。

急に(見物の準備をするよう大宮が)お触れを回しなさって、(葵の上は御禊の行列を)ご見物に(お出かけに)なる。

 

 

続きはこちら源氏物語『車争ひ』品詞分解のみ(2)

 

 源氏物語『車争ひ』まとめ

 

 

 

源氏物語「須磨には、いとど心づくしの秋風に~」品詞分解のみ

『須磨・心づくしの秋風』

「黒=原文」・「赤=解説」・「青=現代語訳

 源氏物語『須磨・心づくしの秋風』まとめ

 

須磨=名詞

=格助詞

=係助詞

いとど=副詞、いよいよ、ますます。その上さらに

心づくし=名詞、深く気をもむこと、さまざまに思い悩むこと

=格助詞

秋風=名詞

=格助詞

=名詞

=係助詞

少し=副詞

遠けれ=ク活用の形容詞「遠し」の已然形

=逆接の接続助詞、活用語の已然形につく

 

須磨には、いとど心づくしの秋風に、海はすこし遠けれど、

須磨では、ますます物思いを誘う秋風のために、海は少し遠いけれども、

 

 

行平=名詞

=格助詞

中納言=名詞

=格助詞

=名詞

吹き越ゆる=ヤ行下二段動詞「吹き越ゆ」の連体形

=格助詞

言ひ=ハ行四段動詞「言ふ」の連用形

けむ=過去の伝聞の助動詞「けむ」の連体形、接続は連用形。基本的に「けむ」は文末に来ると「過去推量・過去の原因推量」、文中に来ると「過去の伝聞・過去の婉曲」

浦波=名詞

夜々=名詞。掛詞、「夜」と浦波が「寄る」という意味に掛けられている。

=係助詞

げに(実に)=副詞、なるほど、実に、まことに。本当に

いと=副詞

近く=ク活用の形容詞「近し」の連用形

聞こえ=ヤ行下二段動詞「聞こゆ」の連用形

=接続助詞

 

行平の中納言の、「関吹き越ゆる」と言ひけむ浦波、夜々はげにいと近く聞こえて、

行平の中納言が、「関吹き越ゆる」と詠んだとかいう浦波が、夜ごとに実にすぐ近くに聞こえて、

 

 

またなく=ク活用の形容詞「またなし」の連用形、またとない、二つとない

あはれなる=ナリ活用の形容動詞「あはれなり」の連体形。「あはれ」はもともと感動したときに口に出す感動詞であり、心が動かされるという意味を持つ。しみじみと思う、しみじみとした情趣がある

もの=名詞

=係助詞

かかる=連体詞、あるいはラ変動詞「かかり」の連体形、このような、こういう

=名詞

=格助詞

=名詞

なり=断定の助動詞「なり」の連用形、接続は体言・連体形

けり=詠嘆の助動詞「けり」の終止形、接続は連用形。「けり」は過去の意味で使われることがほとんどだが、①和歌での「けり」②会話文での「けり」③なりけりの「けり」では詠嘆に警戒する必要がある。①はほぼ必ず詠嘆だが、②③は文脈判断

 

またなくあはれなるものは、かかる所の秋なりけり。

またとなくしみじみと心にしみて感じられるものは、こういう土地の秋なのであった。

 

 

御前(おまえ)=名詞、意味は、「貴人」という人物を指すときと、「貴人のそば」という場所を表すときがある。

=格助詞

いと=副詞

人少なに=ナリ活用の形容動詞「人少ななり」の連用形

=接続助詞

うち休み=マ行四段動詞「うち休む」の連用形

わたれ=補助動詞ラ行四段「わたる」の已然形、一面に~する、全員~する。~し続ける、絶えず~する

=存続の助動詞「り」の連体形、接続はサ変なら未然形・四段なら已然形

=格助詞

一人=名詞

=名詞

=格助詞

覚まし=サ行四段動詞「覚ます」の連用形

=接続助詞

 

御前にいと人少なにて、うち休みわたれるに、一人目を覚まして、

御前に(お仕えする)人もたいそう少なくて、(その人たちも)全員眠っている時に、一人目を覚まして、

 

 

=名詞

=格助詞

そばだて=タ行下二段動詞「そばだつ」の連用形

=接続助詞

四方=名詞

=格助詞

=名詞

=格助詞

聞き=カ行四段動詞「聞く」の連用形

給ふ=補助動詞ハ行四段「給ふ」の連体形、尊敬語。動作の主体である光源氏を敬っている。

=接続助詞

=名詞

ただ=副詞

ここもと=代名詞、この近く、すぐそば

=格助詞

立ち来る=カ変動詞「立ち来(たちく)」の連体形

心地し=サ変動詞「心地す」の連用形

=接続助詞

 

枕をそばだてて四方の嵐を聞き給ふに、波ただここもとに立ち来る心地して、

枕を立てて頭を高くして、四方の激しい嵐の音をお聞きになると、波がすぐそばまで打ち寄せてくるような気がして、

 

 

=名詞

落つ=タ行上二段動詞「落つ」の終止形

=格助詞

=係助詞

おぼえ=ヤ行下二の動詞「覚ゆ」の未然形。「ゆ」には受身・自発・可能の意味が含まれており、ここでは「可能」の意味で使われている。

=打消の助動詞「ず」の連体形、接続は未然形

=接続助詞

=名詞

浮く=カ行四段動詞「浮く」の連体形

ばかり=副助詞、(程度)~ほど・ぐらい。(限定)~だけ。

=格助詞

なり=ラ行四段動詞「成る」の連用形

=完了の助動詞「ぬ」の連用形、接続は連用形

けり=過去の助動詞「けり」の終止形、接続は連用形

 

涙落つともおぼえぬに、枕浮くばかりになりにけり。

涙が落ちたとも気が付かないのに、(涙で)枕が浮くほどになってしまった。

 

 

=名詞

=格助詞

少し=副詞

かき鳴らし=サ行四段動詞「かき鳴らす」の連用形

給へ=補助動詞ハ行四段「給ふ」の已然形、尊敬語。動作の主体である光源氏を敬っている。

=完了の助動詞「り」の連体形、接続はサ変なら未然形・四段なら已然形。直後に「音」が省略されているため連体形となっている。

=接続助詞

=代名詞

ながら=接続助詞、次の③の意味で使われている。

①そのままの状態「~のままで」例:「昔ながら」昔のままで

②並行「~しながら・~しつつ」例:「歩きながら」

③逆接「~でも・~けれども」 例:「敵ながら素晴らしい」

④そのまま全部「~中・~全部」例:「一年ながら」一年中

いと=副詞

すごう=ク活用の形容詞「すごし」の連用形が音便化したもの。もの寂しい、おそろしい、恐ろしいぐらい優れている

聞こゆれ=ヤ行下二段動詞「聞こゆ」の已然形。「ゆ」には受身・自発・可能の意味が含まれており、ここでは「自発」の意味で使われている。

=接続助詞、直前が已然形だから①原因・理由「~なので、~から」②偶然条件「~ところ・~と」③恒常条件「(~する)といつも」のどれかであるが、文脈判断をして①の意味でとる。ちなみに、直前が未然形ならば④仮定条件「もし~ならば」である。

 

琴をすこしかき鳴らし給へるが、我ながらいとすごう聞こゆれば、

琴を少しかき鳴らしなさった音が、我ながらひどく物寂しく聞こえるので、

 

 

弾きさし=サ行四段動詞「弾き止す」の連用形。「止す(さす)」は接尾語、~しかける、途中でやめる、と言った意味がある

給ひ=補助動詞ハ行四段「給ふ」の連用形、尊敬語。動作の主体である光源氏を敬っている。

=接続助詞

 

弾きさし給ひて、

途中で引くのをおやめになって、

 

 

恋ひわび=バ行上二動詞「恋ひ侘ぶ」の連用形、恋に思い悩む、恋しんでつらく思う「侘ぶ(わぶ)」=つらく思う、困る

=接続助詞

泣く=カ行四段動詞「泣く」の連体形

=名詞

=格助詞

まがふ=ハ行四段動詞「紛ふ」の連体形、似通っている。入り混じって区別ができない。

浦波=名詞

=係助詞

思ふ=ハ行四段動詞「思ふ」の連体形

=名詞

より=格助詞、(起点)~から、(手段・用法)~で、(経過点)~を通って、(即時:直前に連体形がきて)~するやいなや

=名詞

=疑問の係助詞、結びは連体形となる。係り結び。

吹く=カ行四段動詞「吹く」の終止形

らむ=現在推量の助動詞「らむ」の連体形、接続は終止形(ラ変なら連体形)。係助詞「や」を受けて連体形となっている。係り結び。

 

恋ひわびて  泣く音にまがふ  浦波は  思ふ方より  風や吹くらむ

恋しさにつらく思って泣く声に似通って聞こえる浦波の音は、私が恋しく思う人たちのいる(都の)方角から風が吹いてくるためだからであろうか。

 

 

=格助詞

歌ひ=ハ行四段動詞「歌ふ」の連用形

給へ=補助動詞ハ行四段「給ふ」の已然形、尊敬語。動作の主体である光源氏を敬っている。

=存続の助動詞「り」の連体形、接続はサ変なら未然形・四段なら已然形

=接続助詞

人々=名詞

おどろき=カ行四段動詞「おどろく」の連用形、目を覚ます、起きる。はっと気づく

=接続助詞

めでたう=ク活用の形容詞「めでたし」の連用形が音便化したもの、みごとだ、すばらしい。魅力的だ、心惹かれる。

おぼゆる=ヤ行下二段動詞「覚ゆ」の連体形。「ゆ」には受身・自発・可能の意味が含まれており、ここでは「自発」の意味で使われている。

=接続助詞

忍ば=バ行四段動詞「忍ぶ」の未然形、我慢する、こらえる。人目を忍ぶ、目立たない姿になる

=可能の助動詞「る」の未然形、接続は未然形。「る」には「受身・尊敬・自発・可能」の四つの意味がある。平安以前では下に打消が来て「可能」の意味で用いられた。平安以前では「可能」の意味の時は下に「打消」が来るということだが、下に「打消」が来ているからといって「可能」だとは限らない。鎌倉以降は「る・らる」単体でも可能の意味で用いられるようになった。

=打消の接続助詞、接続は未然形。「ず(打消しの助動詞)+して(接続助詞)」→「で」となったもの。

 

と歌ひ給へるに、人々おどろきて、めでたうおぼゆるに、忍ばれで、

とお歌いになっていると、人々は目を覚まして、すばらしいと感じられるのにつけても、こらえられず、

 

 

あいなう=ク活用の形容詞「あいなし」の連用形が音便化したもの、わけもなく。つまらない。気に食わない。

起きゐ=ワ行上一段動詞「起き居る」の連用形

つつ=接続助詞、①反復「~しては~」②継続「~し続けて」③並行「~しながら」④(和歌で)詠嘆、の意味があり、ここでは①反復「~しては~」の意味だと思われる。

=名詞

=格助詞

忍びやかに=ナリ活用の形容詞「忍びやかなり」の連用形、ひそかに、そっと、人目を忍ぶ様子だ

かみわたす=サ行四段動詞「かみわたす」の終止形

わたす=補助動詞サ行四段、各々が~する。一面に~する。ずっと~する。

 

あいなう起きゐつつ、鼻を忍びやかにかみわたす。

わけもなく起き上がっては、人目を忍んで鼻を各々かむのである。

 

 

続きはこちら源氏物語『須磨』(げにいかに思ふらむ、~)品詞分解のみ

 

 源氏物語『須磨・心づくしの秋風』まとめ

 

 

 

宇治拾遺物語『小野篁広才の事』まとめ

現代語訳

 

宇治拾遺物語『小野篁広才の事』現代語訳

 

 

解説・品詞分解

 

宇治拾遺物語『小野篁広才の事』解説・品詞分解

 

 

品詞分解のみ

 

宇治拾遺物語『小野篁広才の事』品詞分解のみ

 

 

問題と解答

 

宇治拾遺物語『小野篁広才の事』問題1

 

宇治拾遺物語『小野篁広才の事』問題1の解答