青=現代語訳・下小文字=返り点・上小文字=送り仮名・解説=赤字
香炉峰下新タニ卜二シ山居一ヲ草堂初メテ成リ、偶題二ス東壁一ニ
香炉峰下新たに山居を卜し草堂初めて成り 偶東壁に題す
香炉峰のふもとに新たに山荘の地を定めて草庵を建て、ふと東側の壁に書きつける
作者:白居易
日高ク睡リ足リテ猶ホ慵レシ起クルニ
日高く睡り足りて猶ほ起くるに慵し
日は高くのぼり、眠りも十分なのに、なお起きるのがおっくうだ。
小閣ニ重レネテ衾ヲ不レ怕レレ寒ヲ
小閣に衾を重ねて寒を怕れず
小さな家で布団を重ねて寝ているので、寒さの恐れはない。
遺愛寺ノ鐘ハ欹レテテ枕ヲ聴キ
遺愛寺の鐘は枕を欹てて聴き
遺愛寺の鐘は枕を傾けて頭を高くして聴き、
香炉峰ノ雪ハ撥レゲテ簾ヲ看ル
香炉峰の雪は簾を撥て看る
香炉峰の雪は簾をはね上げて眺める。
匡廬ハ便チ是レ逃レルルノ名ヲ地
匡廬は便ち是れ名を逃るるの地
ここ廬山は名利を離れるにはふさわしい土地だ。
司馬ハ仍ホ為二リ送レルノ老ヲ官一
司馬は仍ほ老を送るの官たり
司馬という役職も、老後を過ごすのにふさわしい官である。
心泰ク身寧キハ是レ帰スル処
心泰く身寧きは是れ帰する処
心が安泰で、体も安らかならば、それこそ帰るべき場所である。
故郷何ゾ独リ在二ルノミナランヤ長安一ニ
故郷何ぞ独り長安に在るのみならんや
※「何ゾ ~ (セ)ン(ヤ)」=反語、「何ぞ ~(せ)ん(や)」、「どうして ~(する)だろうか。(いや、~ない)」
※「独リ ~ノミ」=限定、「ただ ~だけ」
故郷は長安だけであるというわけではない。
詩形:七言律詩
韻=寒・看・官・安
※七言詩は原則として第一句末と偶数句末で韻を踏む。この詩は第一句末で韻を踏んでいないので注意。
対句=第三句と第四句・第五句と第六句が対句となっている。
※律詩は原則として第三句と第四句(頷聯)・第五句と第六句(頸聯)が必ず対句となる。
首聯・頷聯・頸聯・尾聯