問題はこちら大鏡 競べ弓 問題(1)
帥殿の、南の院にて人々集めて弓あそばし①しに、
この殿わたらせ給へれ②ば、思ひかけずあやしと、中関白殿(なかのかんぱくどの)おぼし驚きて、
いみじう③饗応し申させ給うて、
④下﨟におはしませど、⑤前に立て奉りて、⑥まづ射させたてまつらせたまひけるに、
帥殿の矢数、いま二つ劣りたまひ⑦ぬ。
中関白殿、また御前にさぶらふ人々も、
「いま二度延べさせたまへ。」と申して、
延べさせたまひけるを、⑧やすからずおぼしなりて、
「さらば、延べさせたまへ。」と仰せられて、
また射させたまふとて、仰せらるるやう、
「道長が家より帝・后立ちたまふ⑨べきものなら⑩ば、この矢当たれ。」
と仰せらるるに、同じものを、⑪中心には当たるものかは。
次に、帥殿射たまふに、いみじう臆したまひて、⑫御手もわななくけにや、的のあたりにだに近く寄らず、
無辺世界を射たまへ⑬るに、関白殿、色青くなりぬ。
また、入道殿射たまふとて、「摂政・関白すべきものならば、この矢当たれ。」
と仰せらるるに、初めの同じやうに、的の破るばかり、同じところに射させたまひつ。
饗応し、⑭もてはやしきこえさせたまひつる興もさめて、こと苦うなりぬ。
父⑮大臣、帥殿に、「何か射る。⑯☐射☐ 、 ☐射☐ 。」
と制したまひて、ことさめにけり。
問題1.③饗応、④下﨟、⑪中心、⑮大臣の漢字の読みを答えよ。
③きょうおう(きやうおう)
④げろう(げらふ)
⑪なから
⑮おとど
問題2.③饗応、④下﨟の意味を答えよ
③機嫌を取って優遇すること(あるいは、もてなすこと)
④低い官位(あるいは、低い身分など)
問題3.①し、⑦ぬ、⑨べきの助動詞の文法的意味として、「ア~サ」の記号から適当なものを一つ選んで答えよ。
ア.使役 イ.尊敬 ウ.過去 エ.完了 オ.強意 カ.推量 キ.意志 ク.可能 ケ.当然 コ.命令 サ.適当
①ウ.過去
⑦エ.完了
⑨ケ.当然
問題4.②と⑩の接続助詞「ば」の意味・用法として適当なものを次の記号から選びなさい。
ア.原因・理由 イ.偶然条件 ウ.恒常条件 エ.仮定条件
②ア.原因・理由
⑪エ.仮定条件
問題5.⑯☐射☐ 、 ☐射☐ に文字を入れて完成させ、現代語訳を答えよ。
⑯な射そ 、 な射そ
現代語訳:射るな、射るな。
問題6.⑤前に立て奉りての主語・目的語などにあたる人物名を補って現代語訳をせよ。また、「奉り」の敬語の種類と誰から誰に対しての敬意の表現であるかを答えよ。
⑤の現代語訳:先にお立て申されて
敬語の種類:謙譲語(謙譲語は動作の対象を敬う。)
誰から:作者(地の文であるから)
誰に対して:道長(この殿、入道殿)(お立て申されている人)
問題7.⑥まづ射させたてまつらせたまひけるにの主語・目的語などにあたる人物名を補って現代語訳をせよ。また、品詞分解をし、敬語の意味を持つ語があれば、すべて抜き出し、敬語の種類と誰から誰に対しての敬意の表現であるかを答えよ。
⑥現代語訳:道隆(中関白殿)が道長にまず射させ申し上げなさったところ、
品詞分解:まづ/射/させ/たてまつら/せ/たまひ/ける/に
(例:思ひかけ/ず/あやし/と)
抜き出す語 |
敬語の種類 |
誰から |
誰に対して |
たてまつら |
謙譲語 |
作者 |
道長 |
せ |
尊敬語 |
作者 |
道隆 |
たまひ |
尊敬語 |
作者 |
道隆 |
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※道長(この殿、入道殿)
道隆(中関白殿)
問題8.⑭もてはやしきこえさせたまひつる興もさめての主語・目的語などにあたる人物名を補って現代語訳をせよ。また、敬語の意味を持つ語があれば、すべて抜き出し、敬語の種類と誰から誰に対しての敬意の表現であるかを答えよ。
現代語訳:道隆が道長をもてなして、取り持ち申し上げていらっしゃった興もさめて
抜き出す語 |
敬語の種類 |
誰から |
誰に対して |
きこえ |
謙譲語 |
作者 |
道長 |
させ |
尊敬語 |
作者 |
道隆 |
たまひ |
尊敬語 |
作者 |
道隆 |
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問題9.⑬る(無辺世界を射たまへる)と文法的に同じ種類であるものを「ア~エ」の中から選びなさい。
ウ.仰せらるるやう(尊敬の助動詞「らる」の連体形の一部)
エ.もてはやしきこえさせたまひつる興(完了の助動詞「つ」の連体形の一部)
問題10.⑫御手もわななくけにや、的のあたりにだに近く寄らずを現代語訳せよ。
現代語訳:御手も震えたためであろうか、的の近くにさえいかず
問題11.⑧やすからずおぼしなりての理由を
ア.伊周が勝っていたにもかかわらずもう2回延長されたから。
イ.伊周だけが2回延長して射るという勝手なルールが追加されたから。
ウ.道長が勝っていたにもかかわらずもう2回延長されたから。
オ.道長はもう2回射なければならないという勝手なルールが追加されたから。