新古今和歌集「心なき身にもあはれは~」解説・品詞分解・現代語訳

「黒=原文」・「赤=解説」「青=現代語訳」
作者:西行法師(さいぎょうほうし)


心なき  身にもあはれは  知られけり  鴫立つ沢の  秋の夕暮れ

心なき=ク活用の形容詞「心なし」の連体形、情趣(趣・しみじみとした味わい)を解さない、道理を解さない

あはれ=名詞、しみじみとした感動、情趣、風情

れ=自発の助動詞「る」の連用形、接続は未然形。「る」は「受身・尊敬・自発・可能」の四つの意味があり、「自発」の意味になるときはたいてい直前に「心情動詞(思う、笑う、嘆くなど)・知覚動詞(見る・知るなど)」があるので、それが識別のポイントである。自発:「~せずにはいられない、しぜんと~される」

けり=詠嘆の助動詞「けり」の終止形、接続は連用形。「けり」は過去の意味で使われることがほとんどだが、①和歌での「けり」②会話文での「けり」③なりけりの「けり」では詠嘆に警戒する必要がある。①はほぼ必ず詠嘆だが、②③は文脈判断

ものの情趣を解さないこの(出家した)身にも、しみじみとした情趣は自然と感じられることだ。鴫が飛び立っていく沢(水辺)の秋の夕暮れには。


『新古今和歌集』まとめ