「黒=原文」・「赤=解説」・「青=現代語訳」
作者:狭野茅上娘子(さののちがみのおとめ)、
別名.狭野弟上娘子(さののおとがみのおとめ)
君が行く 道の長手を 繰(く)り畳(たた)ね 焼き滅ぼさむ 天の火もがも
行く=カ行四段、連体形
の=格助詞、用法は同格。「道の長手を」→「道で長い道を」
長手=名詞、長い道のり、遠路
繰りたたね=ナ行下二動詞「繰りたたぬ」の連用形。たぐり寄せて畳む。長い道を手繰り寄せて畳むということ。
焼き滅ぼさ=サ行四段、未然形
む=婉曲の助動詞「む」の連体形、接続は未然形。「焼き滅ぼさむ天の火」→「焼き滅ぼす(ような)天の火」。「ような」は付けなくてもよい。
天の火=名詞、訳す際はそのまま「天の火」で良い。意味としては「(道を焼き滅ぼすような)不思議な力を持つ火」
もがも=願望の終助詞、「~があればなあ、~であってほしいものだ」
あなたが(流されて)行く道である長い道を、手繰り寄せて畳み、焼き滅ぼすような天の火があってほしいものです。
※「君」とは中臣朝臣宅守(なかとみのあそんやかもり)のことであり、作者の狭野茅上娘子とは恋仲であった。しかし、作者は結婚できない身分であるきまりがあった。宅守はこの規則を破ったため流罪(るざい)となった。この件を踏まえての和歌である。