竹取物語『天の羽衣・かぐや姫の昇天』解説・品詞分解(1)

「黒=原文」・「赤=解説」「青=現代語訳」
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立て 人どもは、装束(しょうぞく)のきよらなること、ものにもず。飛ぶ車一つ具(ぐ)し たり。羅蓋(らがい)さしたり

立て=タ行四段動詞「立つ」の已然形、立つ、起立する。「立つ」はタ行下二段動詞でもあり、その時は「立てる、立たせる」という意味になる

る=存続の助動詞「り」の連体形、接続はサ変なら未然形・四段なら已然形

似=ナ行上一動詞「似る」の未然形。上一段活用の動詞は「{ ひ・い・き・に・み・ゐ } る」

具し=サ変動詞「具(ぐ)す」の連用形、引き連れる、伴う。持っている

たり=存続の助動詞「たり」の終止形、接続は連用形。もう一つの「たり」も同じ。

(空中に)立っている人たちは、衣装が華やかで美しいことは、比べるものがない。空を飛ぶ車を一台用意している。(車には)薄絹を張った傘をさしかけてある。


その中に、王とおぼしき人、家に、「造麻呂(みやつこまろ)、まうで来(こ)。」と言ふに、猛(たけ)く思ひつる造麻呂も、ものに酔ひたる心地して、うつぶしに伏せ

おぼしき=シク活用の形容詞「おぼし」の連体形、思われる、見受けられる

まうで来(こ)=カ変動詞「まうで来(く)」の命令形、「来」の謙譲語、動作の対象である王とおぼしき人を敬っている。王と思しき人からの敬意である。自尊敬語

つる=完了の助動詞「つ」の連体形、接続は連用形

たる=完了の助動詞「たり」の連体形、接続は連用形

り=完了の助動詞「り」の終止形、接続はサ変なら未然形・四段なら已然形

その中に王と思われる人が、家に向かって、「造麻呂(みやつこまろ・かぐや姫の育ての親である翁(おきな))、出て参れ。」と言うと、意気込んでいた造麻呂も、何かに酔った気分になって、うつ伏せに伏した。


いはく、「汝(なんぢ)、幼き人。いささかなる功徳(くどく)を、翁(おきな)つくりけるによりて、汝が助けにとて、かた時のほどとて下しを、そこら年ごろそこらの黄金賜(たま)ひて、身を変へたるごとなり たり

し=過去の助動詞「き」の連体形、接続は連用形

そこら=副詞、多く、たくさん

年ごろ=名詞、長年、長い間

賜ひ=ハ行四段動詞「賜ふ」の連用形。「与ふ」の尊敬語。天がお与えになったということ。王とおぼしき人が天を敬っている。

たる=完了の助動詞「たり」の連体形、接続は連用形

ごと=比況の助動詞「ごとし」の語幹。~のように

に=完了の助動詞「ぬ」の連用形、接続は連用形
たり=完了の助動詞「たり」の終止形、接続は連用形

(その王と思しき人が)言うには、「お前、愚かな者よ。わずかばかりの善行を、翁が積んだので、お前の助けにと、ほんのわずかな期間と思って(かぐや姫を下界である地上へ)下したが、長年の間、(天が翁に)多くの黄金をお与えになり、別人に変ったように(裕福に)なった。


かぐや姫は罪をつくりたまへ  けれ かく賤しきおのれがもとに、しばしおはし つる なり

たまへ=補助動詞ハ行四段「たまふ」の已然形、尊敬語。動作の主体(罪を作った人)であるかぐや姫を敬っている。

り=完了の助動詞「り」の連用形、接続はサ変なら未然家・四段なら已然形

けれ=過去の助動詞「けり」の已然形、接続は連用形

ば=接続助詞、直前が已然形だから①原因・理由「~なので、~から」②偶然条件「~ところ・~と」③恒常条件「(~する)といつも」のどれかであるが、文脈判断をして①の意味でとる。ちなみに、直前が未然形ならば④仮定条件「もし~ならば」である。

斯く(かく)=副詞、このように、こう

おはし=サ変動詞「おはす」の連用形、「あり・居り・行く・来」の尊敬語。いらっしゃる、おられる、あおりになる。動作の主体であるかぐや姫を敬っている。

つる=完了の助動詞「つ」の連体形、接続は連用形

なり=断定の助動詞「なり」の終止形、接続は体言・連体形

かぐや姫は罪をお作りになったので、このように身分の賤しいお前のもとに、しばらくの間いらっしゃったのである。


罪の限り果て ぬれ 、かく迎ふるを、翁は泣き嘆く。あたは ことなり。はや返したてまつれ。」と言ふ。

果て=タ行下二動詞「果つ」の連用形、終わる、終わりになる

ぬれ=完了の助動詞「ぬ」の已然形、接続は連用形

ば=接続助詞、直前が已然形だから①原因・理由「~なので、~から」②偶然条件「~ところ・~と」③恒常条件「(~する)といつも」のどれかであるが、文脈判断をして①の意味でとる。ちなみに、直前が未然形ならば④仮定条件「もし~ならば」である。

あたは=ハ行四段動詞「能(あた)ふ」の未然形、(たいてい下に打消しを伴って)できる

ぬ=打消しの助動詞「ず」の連体形、接続は未然形

なり=断定の助動詞「なり」の終止形、接続は体言・連体形

たてまつれ=補助動詞ラ行四段「奉る」の命令形、謙譲語。動作の対象である天人を敬っている。自尊敬語

罪を償う期限が終わったので、こうして迎えるのをお前は泣いて嘆き悲しむ。(それでも、かぐや姫を引きとめることは)できないことだ。早くお返しなさい。」と言う。



翁答へて申す、「かぐや姫を養ひたてまつること二十余年になり。『かた時』とのたまふに、あやしくなりはべり 

申す=サ行四段動詞「申す」の連体形、「言ふ」の謙譲語。動作の対象(言われる人)である天人を敬っている

たてまつる=補助動詞ラ行四段「奉る」の連体形、謙譲語。動作の対象であるかぐや姫を敬っている。

ぬ=完了の助動詞「ぬ」の終止形、接続は連用形。もう一つの「ぬ」も同じ

のたまふ=ハ行四段動詞「のたまふ(宣ふ)」の連体形。「言ふ」の尊敬語。おっしゃる。動作の主体である天人を敬っている。

はべり=補助動詞ラ変「侍(はべ)り」の連用形、丁寧語。言葉の受け手(聞き手)である天人を敬っている。敬語を使った翁からの敬意。
※「候ふ・侍(はべ)り」は補助動詞だと丁寧語「~です、~ます」の意味であるが、本動詞だと、丁寧語「あります、ございます、おります」と謙譲語「お仕え申し上げる、お控え申し上げる」の二つ意味がある。
※補助動詞=用言などの直後に置いて、その用言に少し意味を添えるように補助する動詞。英語で言う助動詞「canやwill」みたいなもの。
※本動詞=単体で意味を成す動詞、補助動詞ではないもの。
英語だと、「need」には助動詞と通常の動詞としての用法があるが、「候ふ・侍り」も意味は違うがこれみたいなもの

翁が答えて申し上げるには、「かぐや姫を養い申し上げること二十年あまりになりました。(それなのにあなたは)『かた時(わずかな期間)』とおっしゃるので、疑問に思いました。


また異所(ことどころ)にかぐや姫と申す人 おはす らむ。」と言ふ。

ぞ=強調の係助詞、結びは連体形となる。係り結び

おはす=サ変動詞「おはす」の終止形、「あり」の尊敬語。いらっしゃる、おられる、あおりになる。動作の主体であるかぐや姫を敬っている。

らむ=現在推量の助動詞「らむ」の連体形、接続は終止形(ラ変なら連体形)。係助詞「ぞ」を受けて連体形となっている。係り結び

また別の所にかぐや姫と申す人がいらっしゃるのでしょう。」と言う。


「ここにおはするかぐや姫は、重き病をしたまへ 出でおはします まじ。」と申せ その返りごとはなくて、

おはする=サ変動詞「おはす」の連体形、「あり・居り・行く・来」の尊敬語。いらっしゃる、おられる、あおりになる。動作の主体であるかぐや姫を敬っている。

たまへ=補助動詞ハ行四段「たまふ」の已然形、尊敬語。動作の主体であるかぐや姫を敬っている。

ば=接続助詞、直前が已然形だから①原因・理由「~なので、~から」②偶然条件「~ところ・~と」③恒常条件「(~する)といつも」のどれかであるが、文脈判断をして①の意味でとる。ちなみに、直前が未然形ならば④仮定条件「もし~ならば」である。

え=副詞、下に打消の表現を伴って「~できない」

おはします=サ行四段動詞「おはします」の終止形。「おはす」より敬意が高いもの。動作の主体であるかぐや姫を敬っている。

まじ=打消推量の助動詞「まじ」の終止形、接続は終止形(ラ変なら連体形)

申せ=サ行四段動詞「申す」の已然形、「言ふ」の謙譲語。動作の対象(言われる人)である天人を敬っている。

ば=接続助詞、直前が已然形であり、②偶然条件「~ところ・~と」の意味で使われている

「ここにいらっしゃるかぐや姫は、重い病気にかかっていらっしゃるので、出ていらっしゃることができないでしょう。」と(翁が)申し上げると、その返事はなくて、


屋(や)の上に飛ぶ車を寄せて、「いざ、かぐや姫、穢(きたな)き所に、いかで 久しくおはせ 。」と言ふ。

いかで=副詞、(反語で)どうして

か=反語の係助詞、結びは連体形となる。係り結び

おはせ=サ変動詞「おはす」の未然形、「あり」の尊敬語。いらっしゃる、おられる、あおりになる。動作の主体であるかぐや姫を敬っている。

む=意志の助動詞「む」の連体形、接続は未然形。係助詞「か」を受けて連体形となっている。係り結び。この「む」は、㋜推量・㋑意志・㋕勧誘・㋕仮定・㋓婉曲の五つの意味があるが、文末に来ると「㋜推量・㋑意志・㋕勧誘」のどれかである。

屋根の上に空飛ぶ車を寄せて、「さあ、かぐや姫、けがれたところに、どうして長い間いらっしゃるのですか。(帰りましょう。)」と言う。


立て籠めたる所の戸、すなはちただ開き開き。格子どもも、人はなくして開き。嫗(おうな)抱きて たるかぐや姫、外に出で

たる=完了の助動詞「たり」の連体形、接続は連用形。もう一つの「たる」も同じ

に=格助詞、強調。同じ動作を重ねて強調する。
「斬り斬りけり。」→「めった斬りにした。」
「泣き泣き、」→「とにかく泣き、」

ぬ=完了の助動詞「ぬ」の終止形、接続は連用形。後の二つの「ぬ」も同じ

ゐ=ワ行上一動詞「居(ゐ)る」の連用形。上一段活用の動詞は「{ ひ・い・き・に・み・ゐ } る」

(すると、不思議なことに、)閉めていた部屋の戸が、すぐにすっかり開いてしまった。格子なども、人がいないのに開いてしまった。媼(お婆さん)が抱いていたかぐや姫は、外に出てしまった。


とどむまじけれ 、たださし仰ぎて泣きをり

え=副詞、下に打消の表現を伴って「~できない」

まじけれ=打消推量の助動詞「まじ」の已然形、接続は終止形(ラ変なら連体形)。「不可能の予測」という意味でも良いかもしれない。

ば=接続助詞、直前が已然形だから①原因・理由「~なので、~から」②偶然条件「~ところ・~と」③恒常条件「(~する)といつも」のどれかであるが、文脈判断をして①の意味でとる。ちなみに、直前が未然形ならば④仮定条件「もし~ならば」である。

さし仰ぎ=ガ行四段動詞「さし仰ぐ」の連用形。「さし」は接頭語であり、あまり気にしなくて良い。

をり=ラ変動詞「居(を)り」の終止形

(媼は)とどめることが出来そうもないので、ただ(かぐや姫を)仰ぎ見て泣いている。


竹取心惑ひて泣き伏せ所に寄りて、かぐや姫言ふ、「ここにも心にもあら かく まかるに、昇らだに見送りたまへ。」と言へども

る=存続の助動詞「り」の連体形、接続はサ変なら未然形・四段なら已然形

ここ=代名詞、私、ここ、あなた

で=打消の接続助詞、接続は未然形。「ず(打消しの助動詞)+して(接続助詞)」→「で」となったもの。

斯く(かく)=副詞、このように、こう

まかる=ラ行四段動詞「まかる」の連体形、謙譲語。退出する。参る。

む=婉曲の助動詞「む」の連体形、接続は未然形。この「む」は、㋜推量・㋑意志・㋕勧誘・㋕仮定・㋓婉曲の五つの意味があるが、文中に来ると「㋕仮定・㋓婉曲」のどれかである。

だに=副助詞、強調:(せめて)~だけでも。類推:~さえ

たまへ=補助動詞ハ行四段「たまふ」の命令形、尊敬語。動作の主体である竹取の夫妻を敬っている

ども=逆接の接続助詞、活用語の已然形に付く。接続助詞「を・に・ば・ど・も・ども・が」があるとその後に続く文章において主語が変わる可能性がある。読点の直前に「をにばばどもが」の文字のどれかがあれば主語が変わるかもしれないと思えばよい。

竹取の翁が心を乱しているところに近寄って、かぐや姫が言うことには、「私においても、心ならずもこのように(月の世界に)帰るのですから、せめて空へ昇るのを見送りなさってください。」と言うけれども、


なにしに悲しきに見送りたてまつら 。我をいかにせよとて、捨てては昇りたまふ 具し率(ゐ)おはせ 」と泣きて伏せ 、御心惑ひ

何為に(なにしに)=副詞、(反語で)どうして~か(。いや、ない)。なんのために。

たてまつら=補助動詞ラ行四段「奉る」の未然形、謙譲語。動作の対象であるかぐや姫を敬っている。

む=意志の助動詞「む」の終止形、接続は未然形。この「む」は、㋜推量・㋑意志・㋕勧誘・㋕仮定・㋓婉曲の五つの意味があるが、文末に来ると「㋜推量・㋑意志・㋕勧誘」のどれかである。

せよ=サ変動詞「す」の命令形。する

たまふ=補助動詞ハ行四段「たまふ」の連体形、尊敬語。動作の主体であるかぐや姫を敬っている

ぞ=係助詞。問いただす意味で使われている。

具し=サ変動詞「具(ぐ)す」の連用形、引き連れる、伴う。持っている

率(ゐ)=ワ行上一動詞「率(ゐ)る」の連用形。率(ひき)いる、引き連れていく。上一段活用の動詞は「{ ひ・い・き・に・み・ゐ } る」と覚える。

おはせ=補助動詞サ変「おはす」の未然形、尊敬語。動作の主体であるかぐや姫を敬っている。

ね=終助詞、~てください、~てほしい

れ=完了の助動詞「り」の已然形、接続はサ変なら未然形・四段なら已然形

ば=接続助詞、直前が已然形であり、①原因・理由「~なので、~から」の意味で使われている。接続助詞「を・に・ば・ど・も・ども・が」があるとその後に続く文章において主語が変わる可能性がある。

ぬ=完了の助動詞「ぬ」の終止形、接続は連用形

(翁は)「どうして悲しいのにお見送り申し上げようか。私をどのようにしろと言って、見捨てて昇天なさるのですか。一緒に連れてお行きになってください。」と泣き伏しているので、(かぐや姫の)お心が乱れてしまった。


「文を書き置きてまから 恋しから  折々、取り出でて見たまへ」とて、うち泣きて書く言葉は、

まから=ラ行四段動詞「まかる」の未然形、謙譲語。退出する。参る。

む=意志の助動詞「む」の終止形、接続は未然形。この「む」は、㋜推量・㋑意志・㋕勧誘・㋕仮定・㋓婉曲の五つの意味があるが、文末に来ると「㋜推量・㋑意志・㋕勧誘」のどれかである。

恋しから=シク活用の形容詞「恋し」の未然形

む=婉曲あるいは仮定の助動詞「む」の連体形、接続は未然形。この「む」は、㋜推量・㋑意志・㋕勧誘・㋕仮定・㋓婉曲の五つの意味があるが、文中に来ると「㋕仮定・㋓婉曲」のどれかである。

折々=名詞、その時々、そのつど

たまへ=補助動詞ハ行四段「たまふ」の命令形、尊敬語。動作の主体である竹取の夫妻を敬っている。

うち泣き=カ行四段動詞「うち泣く」の連用形。「うち」は接頭語であまり気にしなくてもよい。

「手紙を書き残して参りましょう。(私を)恋しく思う折々に、取り出してご覧ください。」と言って、泣いて書く(かぐや姫の手紙の)言葉は、



「この国に生まれぬるなら 、嘆か ら ほどまで侍ら 

ぬる=完了の助動詞「ぬ」の連体形、接続は連用形

なら=断定の助動詞「なり」の未然形、接続は体言・連体形

ば=接続助詞、直前が未然形なので④仮定条件「もし~ならば」の意味である。

せ=使役の助動詞「す」の連用形、接続は未然形。「す」には、「使役と尊敬」の二つの意味があるが、直後に尊敬語が来ていない場合は必ず「使役」の意味である。

奉ら=補助動詞ラ行四段「奉る」の未然形、謙譲語。動作の対象である竹取の夫妻を敬っている。

ぬ=打消しの助動詞「ず」の連体形、接続は未然形

侍ら=ラ変動詞「侍(はべ)り」の未然形、謙譲語、おそばにいる、お仕え申し上げる。
※「侍(はべ)り」は補助動詞だと丁寧語「~です、~ます」の意味であるが、本動詞だと、丁寧語「あります、ございます、おります」と謙譲語「お仕え申し上げる、おそばにいる」の二つ意味がある。
※補助動詞=用言などの直後に置いて、その用言に少し意味を添えるように補助する動詞。英語で言う助動詞「canやwill」みたいなもの。
※本動詞=単体で意味を成す動詞、補助動詞ではないもの。
英語だと、「need」には助動詞と通常の動詞としての用法があるが、「侍り」も意味は違うがこれみたいなもの

む=意志の助動詞「む」の終止形、接続は未然形。この「む」は、㋜推量・㋑意志・㋕勧誘・㋕仮定・㋓婉曲の五つの意味があるが、文末に来ると「㋜推量・㋑意志・㋕勧誘」のどれかである。

「この国に生まれたというのならば、(あなたを)嘆かせ申し上げないときまでおそばにいるでしょう。


過ぎ別れぬること、返す返す本意(ほい)なく こそ おぼえ 侍れ

ぬる=完了の助動詞「ぬ」の連体形、接続は連用形

本意なく=ク活用の形容詞「本意(ほい)なし」の連用形、不本意だ、残念だ。「本意」の意味は「本来の意志・かねてからの願い」

こそ=強調の係助詞、結びは連体形となる。係り結び

おぼえ=ヤ行下二段動詞「思ゆ(おぼゆ)」の連用形。「ゆ」には受身・自発・可能の意味が含まれており、ここでは「自発」の意味で使われている。「(自然と)思われる」

侍れ=補助動詞ラ変「侍(はべ)り」の已然形、丁寧語。聞き手である竹取の夫妻を敬っている。係助詞「こそ」を受けて已然形となっている。係り結び

(なので、こうして)去り別れてしまうことは、返す返すも残念に思われます。


脱ぎ置く衣を、形見と見給へ。月の出でたら 夜は、見おこせ 給へ

給へ=補助動詞ハ行四段「給ふ」の命令形、尊敬語。動作の主体である竹取の夫妻を敬っている。もう一つの「給へ」も同じ

たら=存続の助動詞「たり」の未然形、接続は連用形

む=婉曲の助動詞「む」の連体形、接続は未然形。この「む」は、㋜推量・㋑意志・㋕勧誘・㋕仮定・㋓婉曲の五つの意味があるが、文中に来ると「㋕仮定・㋓婉曲」のどれかである。

見おこせ=サ行下二動詞「見遣す(みおこす)」の連用形。こちらを見る。

脱いで置いていく衣を私の形見としてご覧ください。月の出ているような夜は、(私のいる月を)ご覧ください。


見捨て奉りまかる空よりも、落ち べき心地する。」と書き置く。

奉り=補助動詞ラ行四段「奉る」の連用形、謙譲語。動作の対象である竹取の夫妻を敬っている。

まかる=ラ行四段動詞「まかる」の連体形、謙譲語。退出する。参る。

ぬ=強意の助動詞「ぬ」の終止形、接続は連用形。完了・強意の助動詞「つ・ぬ」の直後に推量系統の助動詞(む・べし・らむ・まし)などが来ている時には、強意の意味で使われる。

べき=推量の助動詞「べし」の連体形、接続は終止形(ラ変なら連体形)

(あなたを)見捨て申し上げて参る空から、(悲しみのあまり)落ちてしまいそうな心地がします。」と書き残す。


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竹取物語『天の羽衣・かぐや姫の昇天』まとめ