過去・完了の助動詞 (古典文法:基礎~標準)

「き」「けり」「つ」「ぬ」「たり」「り」

過去の助動詞「き」「けり」…接続(直前に来る活用形)は連用形。(ただし「き」については例外有り)

未然形

連用形

終止形

連体形

已然形

命令形

(せ)

しか

けり

(けら)

けり

ける

けれ

※「き」は不規則活用で覚えづらいが、「迫る騎士、鹿丸。(せ○きし、しか○。)」と覚えると、たいてい忘れない。

意味

「き」…直接経験の過去「~た」

「けり」…間接経験の過去「~た・~たそうだ」

     詠嘆「~たことだ・~たのだなあ」

 

「けり」が詠嘆で使われるとき

  1. 和歌のけり
  2. 「なりけり」
  3. 会話文のけり

※①はほぼ必ず詠嘆だが、②、③は必ずではないので文脈で判断する。

 

「き」の接続の例外

「き」がカ変・サ変に接続するときは、接続が未然形になることがある。

例:「し・しか」は「し・しか」と未然形で読むのが原則である。しかし、「来し方」と言う時は「来」を連用形にする。「来(き)し方」の意味は「過去、過ぎ去った時」である。

  サ変だと「し・しか」のときは未然形を使い、「し・しか」と連用形にはしない。ただし、「き」と「き(終止形)」のときには連用形にする。

 

「き」の未然形「せ」は反実仮想の構文のときしか使われない。

「AばBまし。」=「もしAだったならば、Bだっただろうに。」 

「まし」は反実仮想の助動詞であり、「AましかばBまし。」とするが、「ましか」の部分を「せ」に変えて用いる場合もあるということである。

 

 

 

完了の助動詞「つ」「ぬ」…接続は連用形

未然形

連用形

終止形

連体形

已然形

命令形

つる

つれ

てよ

ぬる

ぬれ

 

意味

完了「~た・~てしまった」

強意「(きっと)~だろう・必ず~」

 

「完了」と「強意」の区別

「つ・ぬ」+「推量系統の助動詞」ならば、必ず強意の意味で用いられる。

「推量系統の助動詞」であればよく、そこでの意味自体は「意志」や「当然」だったりしても、直前の「つ・ぬ」は強意の意味と考える。

 

推量・意志・勧誘・仮定・婉曲の助動詞「む」の場合、接続は未然形なので

「てむ」「なむ」

推量・意志・可能・当然・命令・適当の助動詞「べし」の場合、接続は終止形(ラ変なら連体形)なので

「つべし」「ぬべし」

現在推量・現在の原因推量・現在の婉曲・現在の伝聞の助動詞「らむ」の場合、接続は終止形(ラ変なら連体形)なので

「つらむ」「ぬらむ」

反実仮想・ためらいの意志・推量の助動詞「まし」の場合、接続は未然形なので

「てまし」「なまし」

 

主にこの4種類の合計8パターンのみに気を付けておけばよい。

 

その他、「てよ」「ね」と命令形になり、単独で「強意」の意味で用いることもあるが、必ず「強意」というわけではないので、文脈判断が必要である。

 

 

 

完了の助動詞「たり」「り」

未然形

連用形

終止形

連体形

已然形

命令形

たり

たら

たり

たり

たる

たれ

(たれ)

(れ)

 

「たり」の接続は連用形だが、

「り」の接続はサ変ならば未然形・四段ならば已然形である。要するに語尾の発音がeの用言に接続する。

また、「かちゃんはさ・み・し・い」と接続について覚えるよう指導する先生が多い。

「さみしい」とは「変なら然、段なら然形」の略である。

 

意味

(1)完了「~た・」

(2)存続「~ている・~てある」

 

「完了」と「強意」の区別は主に文脈判断だが、「存続」の意味の方が少し多い気がするという程度の認識でいると良い。

 

助動詞「り」は助動詞「る」との識別に注意

受身・尊敬・自発・可能の「る」は四段・ナ変・ラ変の未然形に接続する。要するに語尾の発音がaの用言に接続する。

(例)

四段活用の動詞「乗る」が直前に来る場合

「乗れる」ならば、この「る」は完了・存続の助動詞

「乗らる」ならば、この「る」は尊敬等の助動詞

 

サ変動詞「す」が直前に来る場合

「せる」ならば、この「る」は完了・存続の助動詞

「せらる」ならば、この「らる」は尊敬等の助動詞

※受身・尊敬・自発・可能の助動詞「る」の直前にサ変動詞「す」が来ることはない。この場合、「る」ではなく「らる」を用いる。

 

 

過去・完了の助動詞の接続(直前に付く用言の活用形)は、完了・存続の助動詞「り」以外は全て連用形である。「り」についてはあの覚え方。