万葉集「瓜(うり)食(は)めば子ども思うほゆ~」解説・品詞分解・現代語訳

「黒=原文」・「赤=解説」「青=現代語訳」
作者:山上憶良(やまのうえのおくら)

瓜(うり)食(は)めば  子ども思ほゆ  栗食めば  ましてしぬはゆ  いづくより  来りしものそ  目交(まかない)に  もとなかかりて  安眠(やすい)しなさぬ


食め=マ行四段動詞「食(は)む」の已然形

ば=接続助詞、直前が已然形だから①原因・理由「~なので、~から」②偶然条件「~ところ・~と」③恒常条件「(~する)といつも」のどれかであるが、文脈判断をして②の意味でとる。ちなみに、直前が未然形ならば④仮定条件「もし~ならば」である。

思ほゆ=ヤ行下二動詞「思ほゆ」の終止形、自然に思われる、しのばれる

まして=副詞、いっそう、もっと

しぬはゆ=ヤ行下二動詞「偲(しぬ)はゆ」の終止形、しのばれる、自然に思い出される

いづく=代名詞、どこ

来り=ラ行四段動詞「来(きた)る」の連用形

し=過去の助動詞「き」の連体形、接続は未然形

そ=強調の係助詞「ぞ」と同じ。ここでは問いただす意味で使われている。

目交(まなかい)=名詞、目と目の間、目の前

もとな=副詞、しきりに、やたらに

かかり=ラ行四段動詞「かかる」の連用形、(目や心に)とまる、つく

し=副助詞、語調を整えたり、強意を表す。訳さなくてもよい。

なさ==サ行四段動詞「寝(な)す」の未然形、寝かせる、眠らせる

ぬ=打消の助動詞「ず」の連体形、接続は未然形。直後に「ことよ」というような言葉が省略されているため連体形で終わっている。

瓜を食べると子供のことが自然と思われる。栗を食べると、いっそう(子供のことが)しのばれる。(子供は)どこから来たものなのか。目の前にしきりにちらついて、(私に)安眠させてくれないことよ。


『万葉集』まとめ