「青字=解答」・「※赤字=注意書き、解説等」
問題はこちら更級日記『物語(源氏の五十余巻)』(2)問題1
①かくのみ思ひくんじたるを、心も慰め②むと、心苦しがりて、母、物語など求めて見せ③たまふに、げにおのづから慰みゆく。
紫のゆかりを見て、続きの見まほしくおぼゆれど、人語らひなどもえせず。
たれもいまだ都慣れぬほどにて、④□見つけず。
いみじく⑤心もとなく、⑥ゆかしくおぼゆるままに、「この源氏の物語、一の巻よりして、皆見せたまへ」と、心の内に祈る。
親⑦の太秦に⑧こもりたまへるにも、異事なく、このことを申して、
⑨出でむままにこの物語見果てむと思へど、見えず。
いと口惜しく思ひ嘆か⑩るるに、をばなる人の田舎より上りたる所に渡いたれば、
「いとうつくしう生ひ⑪なりにけり」など、あはれがり、めづらしがりて、帰るに、
「⑫何をか奉らむ。⑬まめまめしき物はまさなかりなむ。
⑭ゆかしくしたまふなる物を奉らむ」とて、源氏の五十余巻、⑮櫃に入りながら、
在中将・とほぎみ・せり河・しらら・あさうづなどいふ物語ども、ひと袋とり入れて、得て帰る心地のうれしさぞいみじきや。
問題1.⑤心もとなし、⑥ゆかし、の意味を答えよ。
⑤じれったい・待ち遠しくて心がいらだつ
⑥読みたい・心がひきつけられる・見たい
問題2.「③たまふ」は誰を敬っているか(敬意の対象は誰か)人物を答えよ。
※ここでの「給ふ」はすべて尊敬語として使われているので、動作の主体を敬っている。(ちなみに「給ふ」は下二段活用の時は謙譲語として使われる。)
③(作者の)母 ※見せるという動作の主体
問題3.②む、⑩るる、の助動詞の文法的意味として、「ア~シ」の記号から適当なものを一つ選んで答えよ。
ア.使役 イ.尊敬 ウ.勧誘 エ.完了 オ.強意 カ.推量 キ.意志 ク.受身 ケ.存続 コ.自発 サ.可能 シ.婉曲
②キ.意志
⑩コ.自発
問題4.「④□見つけず」の□に入る言葉を答えよ。
④え
※暗記していなくても「人語らひなどもえせず」の「えせず」をヒントにして考えるとよい。
問題5.⑦の、における「の」の用法を「ア~オ」の記号から適当なものを一つ選んで答えよ。
ア.連体修飾格 イ.準体格 ウ.主格 エ.同格 オ.連用格
⑦ウ.主格
問題6.⑪なり、の文法的説明として適当なものを「ア~オ」の記号の中から選んで答えよ。
ア.断定の助動詞 イ.推定の助動詞 ウ.伝聞の助動詞 エ.動詞の一部 オ.形容動詞の一部
⑪エ.動詞の一部
※ラ行四段動詞「生ひ成る」の連用形「生ひ成り」の「成り」
問題7.「①かくのみ思ひくんじたるを」を現代語訳せよ。
①このようにふさぎ込んでばかりいるのを
問題8.「⑧こもりたまへる」を例にならって品詞分解せよ。
(例:思ひかけ/ず/あやし/と)
品詞分解:こ も り/た ま へ/ る
※こもる(籠る)=ラ行四段、神社や寺に泊まって祈る、参籠する
※たまふ=補助動詞ハ行四段、尊敬語、動作の主体である親を敬っている。
※る=完了の助動詞「り」の連体形、接続はサ変なら未然形、四段なら已然形。今回は直前に四段の已然形(たまへ)がきている。
問題9.「⑨出でむままにこの物語見果てむと思へど、見えず」を助動詞などに気を付けて現代語訳せよ。
⑨退出したらすぐにこの物語を最後まで読んでしまおうと思ったが、見ることができない。
※む=婉曲の助動詞「む」の連体形
※む=意志の助動詞「む」の終止形
問題10.「⑫何をか奉らむ」の中に含まれている敬語を抜き出し、敬語の種類(尊敬・謙譲・丁寧のどれか)と誰を敬っているか人物名を答えよ。
抜出すべき敬語:奉ら
敬語の種類:謙譲語
誰を敬っているか:作者 ※謙譲語は動作の対象を敬う。差し上げるという動作の対象は「作者・菅原孝標の女(すがわらのたかすえのむすめ)」である。
問題11.「⑬まめまめしき物はまさなかりなむ」を現代語訳を答えよ。
⑬実用的なものは、つまらない(よくない)でしょう。
問題12.「⑭ゆかしくしたまふなる物を奉らむ」の現代語訳を答えよ。
⑭欲しがっていらっしゃると聞いている物を差し上げましょう。
※なる=伝聞の助動詞「なり」の連体形
問題13.「⑮櫃に入りながら」の「櫃」の漢字読みを答えよ。また、「ながら」の意味に気を付けて現代語訳せよ。
「櫃」の漢字の読み:ひつ
現代語訳:櫃(ふたの付いた大型の木箱)に入ったまま
問題14.「更級日記」の作者を答えよ。
作者:菅原孝標の女(すがわらのたかすえのむすめ)