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伊勢物語『芥川・芥河(あくたがわ)』問題の解答

「青字=解答」「※赤字=注意書き、解説等」
問題はこちら伊勢物語『芥川・芥河(あくたがわ)』問題

むかし、男ありけり。女のえ得まじかりけるを、年を経てよばひわたりけるを、からうじて盗み出でて、いと暗きに来にけり

芥川といふ川をて行きければ、草の上に置きたりける露を、「かれは何ぞ」となむ男に問ひける。
行く先多く、夜もふけにければ、鬼ある所とも知らで、神さへいといみじう鳴り、雨もいたう降りければ、あばらなる倉に、女をば奥におし入れて、男、弓、胡籙を負ひて戸口に居り。

はや夜も明けなむと思ひつつたりけるに、鬼はや一口に食ひてけり。「あなや」と言ひけれど、神鳴るさわぎに、え聞かざりけり

やうやう夜も明けゆくに、見れば、率て女もなし。足ずりをて泣けども、かひなし

白玉か  なにぞと人の  問ひしとき  露と答へて  消えなましものを


問題1.⑥胡籙、⑭来、の漢字の読みを答えよ。

やなぐい(やなぐひ)

来(こ)=カ変動詞「来(く)」の未然形。
し=過去の助動詞「き」の連体形。接続は連用形だが、直前にカ変動詞「来」を置くときは、例外的に「来」を未然形にする。ただし「来(き)し方」と言う時は「来」を連用形にする。「来し方」の意味は「過去、過ぎ去った時」である。


問題2.②よばひわたり、⑪やうやう、⑰かひなし、のここでの意味を答えよ。

求婚し続ける
よばひわたり=ラ行四段動詞「よばひわたる」の連用形、求婚し続ける。「よばふ」と「わたる」がくっついて一つの動詞になったもの
よばふ=呼び続ける、求婚する。(古典において、当時は女性の名を呼ぶことはプロポーズであった。よって、名前を呼び続ける=求婚するという意味で用いられるようになった。)「よぶ(バ行四段動詞)+ふ(継続の助動詞)」で「よばふ」と言う言葉が生まれた。「ふ」は奈良時代の助動詞
わたる=動作の継続を表す補助動詞。ラ行四段。~しつづける

だんだん、しだいに
どうしようもない、効果がない、むだだ


問題3.④率、⑧ゐ、⑫明け、⑬見れ、の活用の種類と活用形を答えよ。

解答例:㊵カ行変格活用・已然形
ワ行上一段活用・連用形
率(ゐ)=ワ行上一動詞「率(ゐ)る」の連用形。率(ひき)いる、引き連れていく。上一段活用の動詞は「{ ひ・い・き・に・み・ゐ } る」と覚える。
※接続助詞「て」の前は連用形

ワ行上一段活用・連用形
※完了・存続の助動詞「たり」の接続は連用形
カ行下二段活用・連用形
マ行上一段活用・已然形
※接続助詞「ば」の直前は未然形か已然形
ば=接続助詞、直前が已然形だから①原因・理由「~なので、~から」②偶然条件「~ところ・~と」③恒常条件「(~する)といつも」のどれかであるが、文脈判断をして①の意味でとる。ちなみに、直前が未然形ならば④仮定条件「もし~ならば」である。


問題4.⑮、⑯、の「し」における文法的説明として適切な記号を、次の「ア~オ」の中から一つ選んで答えよ。
ア.サ行変格活用の動詞  イ.サ行四段活用の動詞  ウ.過去の助動詞「き」の連用形  エ.過去の助動詞「き」の連体形  オ.形容詞の一部

エ.過去の助動詞「き」の連体形
ア.サ行変格活用の動詞


問題5.③来にけり、⑨食ひてけり、を例にならって品詞分解し、説明せよ。

例:「い は/れ/ず。」
いは=動詞・四段・未然形
れ=助動詞・受身・未然形
ず=助動詞・打消・終止形

③品詞分解:「来/に/け り
来=動詞・カ変・連用形
に=助動詞・完了・連用形
けり=助動詞・過去・終止形

に=完了の助動詞「ぬ」の連用形、接続は連用形

⑨品詞分解:「食 ひ/て/け り
食ひ=動詞・四段・連用形
て=助動詞・完了・連用形
けり=助動詞・過去・終止形

て=完了の助動詞「つ」の連用形、接続は連用形


問題6.「①女のえ得まじかりけるを」、「⑤神さへいといみじう鳴り」、「⑦はや夜も明けなむ」、「⑩え聞かざりけり」の現代語訳を答えよ。

女で自分のものに出来そうもなかった女を
の=格助詞、用法は同格。「で」に置き換えて訳すと良い。「女のえ得まじかりけるを」→「女で自分の物にできそうになかった女を、」

え=副詞、下に打消の表現を伴って「~できない。」

得=ア行下二動詞「得(う)」の終止形。ア行下二段活用の動詞は「得(う)」・「心得(こころう)」・「所得(ところう)」の3つしかないと思ってよいので、大学受験に向けて覚えておくとよい。

まじかり=打消推量の助動詞「まじ」の連用形、接続は終止形(ラ変は連体形)。

ける=過去の助動詞「けり」の連体形、接続は連用形

雷までもたいそうひどく鳴り
神=名詞、ここでは雷の意味。ほかに、神、天皇、恐ろしいもの

さへ=副助詞、~までも

いみじう=シク活用の形容詞「いみじ」の連用形が音便化したもの。良い意味でも悪い意味でも程度がひどい。すばらしい、ひどい

早く夜が明けてほしい
明け=カ行下二動詞「明く」の未然形。直後に願望の終助詞があるため未然形となっている。

なむ=願望の終助詞。~てほしい、~てもらいたい

(男は女の叫び声を)聞く事が出来なかった
え=副詞、下に打消の表現を伴って「~できない。」

ざり=打消の助動詞「ず」の連用形、接続は未然形

けり=過去の助動詞「けり」の終止形、接続は連用形


問題7.「⑱白玉か  なにぞと人の  問ひしとき  露と答へて  消えなましものを」の和歌における「露」の縁語を答えよ。また、この和歌の現代語訳を答えよ。

縁語:消え

現代語訳:「あれは白玉(真珠)ですか、何かしら。」とあの人が尋ねたときに、「あれは露ですよ。」と答えて、(その露が消えるように自分も)消えてしまったらよかったのになあ。(そうすればこんな悲しまなくて済んだのに。)
な=強意の助動詞「ぬ」の未然形。基本的に助動詞「つ・ぬ」は完了の意味だが、直後に推量系統の助動詞「む・べし・らむ・まし」などがくると「強意」の意味となる。

まし=反実仮想の助動詞「まし」の連体形、接続は未然形。反実仮想とは事実に反する仮想である。

ものを=詠嘆の終助詞、~のになあ、~のだがなあ


問題8.この「伊勢物語」の主人公のモデルだと考えられている人物を答えよ。

答え:在原業平


伊勢物語『芥川・芥河(あくたがわ)』解説・品詞分解