解答はこちら竹取物語『天の羽衣・かぐや姫の昇天』(2)問題1の解答
天人の中に、持たせたる箱あり。天の羽衣入れり。またあるは、不死の薬入れり。
一人の天人言ふ、「壺①なる御薬②奉れ。穢(けが)き所の物③きこしめしたれば、御心地悪しからむものぞ。」とて、
持て寄りたれば、いささかなめたまひて、少し形見とて、脱ぎ置く衣に包まむとすれば、ある天人、包ませず。
御衣(みぞ)を取り出でて着せ④むとす。その時に、かぐや姫、「しばし待て。」と言ふ。
「衣着せつる人は、⑤心異になるなりといふ。もの一言、言ひ置くべきことあり⑥けり。」と言ひて、文書く。
天人、「遅し。」と、⑦心もとながりたまふ。
かぐや姫、「⑧もの知らぬこと、なのたまひそ。」とて、いみじく静かに、朝廷(おほやけ)に御文⑨奉り⑩たまふ。あわてぬさまなり。
「かくあまたの人を賜ひてとどめ⑪させたまへど、許さぬ迎へまうで来て、取り率てまかりぬれば、口惜しく悲しきこと。
宮仕へつかうまつらずなりぬるも、かくわづらはしき身にて⑫はべれば、⑬心得ず思しめされつらめども、
心強く承らずなりにしこと、⑭なめげなる者に思しめしとどめられぬるなむ、心にとまりはべりぬる。」とて、
今はとて 天の羽衣 着るをりぞ 君を⑮あはれと 思ひ出で⑯ける
とて、壺の薬添へて、頭中将呼び寄せて⑰奉らす。中将に天人取りて伝ふ。
中将取りつれば、ふと天の羽衣うち着せ⑱たてまつりつれば、翁を、いとほしく、かなしと思しつることも失せぬ。
この衣着つる人は、もの思ひなくなりにければ、車に乗りて、百人ばかり天人具して、昇りぬ。
問題1.③きこしめす、⑦心もとながる、⑮あはれ、のここでの意味を答えよ。
③
⑦
⑮
問題2.①なる、④む、⑥けり、⑪させ、⑯ける、の助動詞の文法的意味として、「ア~シ」の記号から適当なものを一つ選んで答えよ。
ア.推定 イ.伝聞 ウ.断定 エ.存在 オ.推量 カ.意志 キ.勧誘 ク.婉曲 ケ.過去 コ.詠嘆 サ.使役 シ.尊敬
①
④
⑥
⑪
⑯
問題3.②奉れ、⑨奉り、⑩たまふ、⑫はべれ、⑰奉ら、⑱たてまつり、の敬語の種類(尊敬・謙譲・丁寧のどれか)と誰から誰に対しての敬意の表現であるかを、例にならって答えよ。
単語 |
敬語の種類 |
誰から |
誰に対して |
(例)③きこしめし |
尊敬語 |
天人 |
かぐや姫 |
②奉れ |
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⑨奉り |
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⑩たまふ |
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⑫はべれ |
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⑰奉ら |
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⑱たてまつり |
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問題4.「⑧もの知らぬこと、なのたまひそ」、「⑭なめげなる者に思しめしとどめられぬるなむ、心にとまりはべりぬる」、の現代語訳を答えよ。
⑧
⑭
問題5.「⑬心得ず思しめされつらめども」、の現代語訳を主語を補って答えよ。
⑬
問題6.「⑤心異になるなり」とはどのような変化が訪れることなのか答えよ。
⑤