「黒=原文」・「赤=解説」・「青=現代語訳」
防人歌=防人(防備のため九州の要所に置かれた兵士、期間は三年)の人たちの詠んだ歌
韓衣(からころも) 裾(すそ)に取りつき 泣く子らを 置きてぞ来(き)ぬや 母(おも)なしにして
韓衣(からころも)=唐風(中国風)の服。「裾」の枕詞だという説もある。
とりつき=カ行四段動詞「とりつく」の連用形。すがりつく
泣く=カ行四段動詞の連体形。
子ら=名詞、「子ら」の「ら」は愛称である。子供は複数かどうかは不明。
置き=カ行四段動詞の連用形。
ぞ=強調の係助詞、結びは連体形となる。ここでの結びとなるべき部分は「ぬ(終止形)」であり終止形となっているが、本来は「ぬる(連体形)」となるはずなのを作者が間違えたため係り結びになっていない。
来(き)=カ変動詞「来る」の連用形。直後に接続が連用形となる助動詞「ぬ」が来ているため、「来(き)(連用形)」となっている。「来(こ)ぬ」などと読まないよう注意。
ぬ=完了の助動詞「ぬ」の終止形、接続は連用形。本来は係り結びで「ぬる」となるはずであるが終止形となっている。
や=詠嘆の間投助詞。「や」は文末の下に付くので、係り結びの結びになるべき部分は「ぬ」の所である。
母なし=名詞、母親のいない子
に=断定の助動詞「なり」の連用形、接続は体言・連体形
して=接続助詞。…であって、…で。
衣の裾にすがりついて泣く子を残して来てしまったことよ。母親のいない状態で。