「黒=原文」・「青=現代語訳」
解説・品詞分解はこちら宇治拾遺物語『博打、聟入りのこと』(1)解説・品詞分解
昔、博打の子の年わかきが、目鼻一所にとりよせたるやうにて、世の人にも似ぬありけり。
昔、博打の子で年の若い者が、目と鼻を一か所に寄せたようで、世間一般の人にも似ない者がいた。
ふたりの親、これいかにして世にあらせんずると思ひてありけるところに、
両親は、この子をどのようにして世渡りさせようかと思っていたところに、
長者の家にかしづく女のありけるに、顏よからん聟とらんと、母のもとめけるをつたへ聞きて、
長者(お金持ち)の家で大切に育てている娘がいたが、顔の良いような婿を取ろうと、(その娘の)母親が探し求めていたのを伝え聞いて、
「天(あめ)の下の顏よしといふ、『聟にならん』とのたまふ」といひければ、
「天下の美男子という男が『婿になろう』とおっしゃっている」と言ったところ、
長者、よろこびて、「聟にとらん」とて、日をとりて契りてけり。
(その)長者は喜んで、「(その男を)婿にとろう」と言って、日(吉日)を選んで約束してしまった。
その夜になりて、裝束など人にかりて、月はあかかりけれど、顏みえぬやうにもてなして、
その夜になって、衣装などを人に借りて、月は明るかったが、顔が見えないように取り計らって、
博打ども集りてありければ、人々しくおぼえて、心にくく思ふ。
(客として仲間の)博打打ち達が集まっていたので、一人前のものであるように思われて、(長者側の者たちには、その様子を)奥ゆかしく思った。
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