更級日記『物語(源氏の五十余巻)』(2)現代語訳

「黒=原文」・「青=現代語訳」

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 はしるはしるわづかに見つつ、心も得ず、心もとなく思ふ源氏を、

(今までは)とぎれとぎれに、少しだけ見ては、(物語の筋を)理解できず、じれったく思っていた源氏物語を、


一の巻よりして、人も交じらず、几帳の内にうち臥して、引き出でつつ見る心地、

一の巻から読み始めて、誰とも合わず、几帳の内に寝転んで、引き出しては読む心地は、


后(きさき)の位も何にかはせむ。

后(皇后・天皇の妻)の位も(比較すると)もののかずではない(ほど楽しかった)。


昼はひぐらし、夜は目の覚めたる限り、灯を近くともして、これを見るよりほかのことなければ、

昼は一日中、夜は目が覚めている限り、燈火を近くにともして、これを読むよりほかのことはしなかったので、


おのづからなどは、そらにおぼえ浮かぶを、いみじきことに思ふに、

自然と(物語の文章や人物を)覚えていて頭に浮かぶのを、素晴らしいことだと思っていると、


夢に、いと清げなる僧の、黄なる地の袈裟(けさ)着たるが来て、「法華経五の巻を、とく習へ」と言ふと見れど、

夢に、たいそうさっぱりとして美しい僧で、黄色の地の袈裟を着ている僧が出てきて、「法華経の五の巻を早く習いなさい。」と言うと見たが、


人にも語らず、習はむとも思ひかけず、物語のことをのみ心にしめて、

人にも話さず、(法華経を)習おうとも心がけず、物語のことだけを深く心に思いこんで、


「われはこのごろわろきぞかし。盛りにならば、

私は今のところ器量(容貌)はよくないことだよ。(でも、)女としての盛りの年頃になったら、


かたちも限りなくよく、髪もいみじく長くなりなむ。

顔立ちこの上なくよく、きっと髪もたいそう長くなるだろう。


光の源氏の夕顔、宇治の大将の浮舟の女君のやうにこそあらめ。」

光源氏の(愛した)夕顔、宇治の大将の(愛した)浮舟の女君のように(未来の自分は)あるだろう。」


と思ひける心、まづいとはかなくあさまし。

と思った心は、実にたいそうあてにならなくあきれることだ。

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