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更級日記 『物語(源氏の五十余巻)』(1)解説・品詞分解

「黒=原文」・「赤=解説」「青=現代語訳」

原文・現代語訳のみはこちら更級日記『物語(源氏の五十余巻)』(1)現代語訳

問題はこちら更級日記『物語(源氏の五十余巻)』(1)問題1


かく  のみ  思ひくんじ  たるを、心も慰め  と、心苦しがりて、

かく=副詞、このように

のみ=副助詞、ただ…だけ、…ばかり

思ひくんず=サ変、気がめいる、ふさぎこむ。「くんず」だけでも同じ意味。

たる=存続の助動詞「たり」の連体形、接続は連用形。「完了」の可能性もないこともない。

慰む=マ行下二、慰める、気持ちをなごませる。四段活用だと「気持ちがなごむ、気がまぎれる」なので注意。

む=意志の助動詞「む」の終止形、接続は未然形。「む」は文末に来ると「推量・意志・勧誘」のどれかの意味であり、【「心を慰めよう。」と、】というように「む」の後には句点が省略されているので、文末扱いで「意志」の意味となっている。

心苦し=形容詞シク活用、心配である、心苦しく思われる

ただこのようにふさぎ込んでばかりいるのを、心を慰めようと、心配して、


母、物語など求めて見せ  たまふに、げに  おのづから  慰みゆく。

見す=サ行下二、見せる。四段活用だと尊敬語で「御覧になる」という意味になるので注意。

たまふ=補助動詞ハ行四段、尊敬語、動作の主体(見せる人)である母を敬っている。

げに(実に)=副詞、まことに、なるほど、ほんとうに

おのづから=副詞、自然と、ひとりでに、たまたま

慰む=マ行四段、気持ちがなごむ、気分が晴れる、気がまぎれる。下二段活用だと「慰める、気持ちをなごませる」となり、「使役」の意味を含むので注意。

母が、物語などを探して見せてくださると、なるほど自然と慰められてゆく。


紫のゆかりを見て、続きの見まほしく  おぼゆれど、人語らひなども    

紫のゆかり=名詞、源氏物語の若紫の巻のこと。「ゆかり」は縁のことである。

まほしく=希望の助動詞「まほし」の連用形、接続は未然形

おぼゆれ=「おぼゆ」の已然形、ヤ行下二、自然と思われる。「思ふ」に自発・可能・受身の意味を表す「ゆ」がくっついたもの。

人語らひ=名詞、人に相談すること

え=副詞、下に打消しの表現を伴って「~できない。」

せ=サ変動詞「す」の未然形、「~する」

ず=打消しの助動詞「ず」の終止形、接続は未然形

(源氏物語の)若紫の巻を見て、自然と続きを見たいと思われたが、人に相談することなどもできない。


たれもいまだ都慣れ  ほど  て、  見つけ  

ぬ=打消しの助動詞「ず」の連体形、接続は未然形。今回は接続だけでは完了・強意の助動詞「ぬ」の終止形と判別は付かないが、直後に体言が来ていることからこの「ぬ」は連体形だと判断し、活用から導き出すことができる。

ほど=名詞、頃、時、限度、様子

に=断定の助動詞「ぬ」の連用形、接続は体言・連体形

え=副詞、下に打消しの表現を伴って「~できない。」

見つく=カ行下二、見つける。四段活用だと、「見慣れ親しむ」の意味になるので注意。

ず=打消しの助動詞「ず」の終止形、接続は未然形

いまだ誰も都に慣れない頃であるので、見つけられない。


いみじく  心もとなくゆかしく  おぼゆる  ままに

いみじ=形容詞シク活用、(いい意味でも悪い意味でも)程度がひどい、甚だしい、とても

心もとなし=形容詞ク活用、待ち遠しくて心がいらだつ、じれったい

ゆかし=形容詞シク活用、心がひきつけられる、見たい、聞きたい、知りたい

おぼゆ=ヤ行下二、自然と思われる。

ままに=…にまかせて、思うままに、(原因・理由)…なので、…するとすぐに。「まま(名詞/に(格助詞))

とてもじれったく、読みたいと思われるので、


「この源氏の物語、一の巻より  て、皆見せ  たまへ」と、心の内に祈る。

より=格助詞、(起点)…から

し=サ変動詞「す」の連用形、代動詞であり、本来の動詞は「始む」と思われる。代動詞はその場面の文脈に応じて適切な動詞に変換して訳す。「いと雨して、」⇒「たいそう雨が降って、」

見す=サ行下二、見せる

たまふ=補助動詞ハ行四段、尊敬語、動作の主体(見せる人)である仏様を敬っていると思われる。

「この源氏物語を、一の巻から始めて、全部見せてください。」と心の中で祈る。


太秦(うづまさ)にこもり  たまへ  にも、異事(ことごと)なく、このことを申して、

の=格助詞、主格。「親が太秦に~」

こもる(籠る)=ラ行四段、神社や寺に泊まって祈る、参籠する

たまふ=補助動詞ハ行四段、尊敬語、動作の主体である親を敬っている。

る=完了の助動詞「り」の連体形、接続はサ変なら未然形、四段なら已然形。今回は直前に四段の已然形(たまへ)がきている。

異事=名詞、別の事、他の事

申す=サ行四段、「言ふ・願ふ」などの謙譲語、動作の対象(願われる人)である仏様を敬っていると思われる。

親が太秦(の広隆寺)に参籠なさった時にも、他のことは言わず、このことばかりお願い申し上げて、


出で  ままにこの物語見果て  と思へど、見    

む=婉曲の助動詞「む」の連体形、接続は未然形。㋜推量・㋑意志・㋕勧誘・㋕仮定・㋓婉曲の五つの意味があるが、文末でなく文中で使われるときは「㋕仮定・㋓婉曲」のどちらかである。基本的に直後に体言が来ていれば「婉曲」である。

ままに=…するとすぐに、…にまかせて、思うままに、(原因・理由)…なので。「まま(名詞/に(格助詞))

果つ=補助動詞タ行下二、…し終わる、すっかり…しきる

む=意志の助動詞「む」の終止形、接続は未然形、上記の「む」であるが、『「この物語を見果てむ。」と思へど』と句点(「。」)が省略されているので、終止形となり、文末扱いである。よって、「㋜推量・㋑意志・㋕勧誘」の中から文脈上適切な「意志」と判断する。

え(得)=補助動詞「う(得)」の未然形、ア行下二、「~(することが)できる」

ず=打消しの助動詞「ず」の終止形、接続は未然形

退出したらすぐにこの物語を最後まで読んでしまおうと思ったが、見ることができない。


いと口惜しく思ひ嘆かるるに、をばなる田舎より上りたる所に渡い  たれ  

口惜し=形容詞シク活用、悔しい、残念だ

るる=自発の助動詞「る」の連体形、接続は未然形。「る」は「受身・尊敬・自発・可能」の四つの意味があり、「自発」の意味になるときはたいてい直前に「心情動詞(思う、笑う、嘆くなど)・知覚動詞(見る・知るなど)」があるので、それが識別のポイントである。自発:「~せずにはいられない、しぜんと~される」

なる=断定の助動詞「なり」の連体形、接続は体言・連体形

の=格助詞、主格。「叔母である人が地方から~」

たる=完了の助動詞「たり」の連体形、接続は連用形

渡い(わたい)=動詞「渡る」の連用形が音便化(イ音便)したもの、「行く、来る」

たれ=完了の助動詞「たり」の已然形、接続は連用形

ば=接続助詞、直前が已然形だから①原因・理由「~なので、~から」②偶然条件「~ところ・~と」③恒常条件「(~する)といつも」のどれかであるが、文脈判断をして②の意味でとる。ちなみに、直前が未然形ならば④仮定条件「もし~ならば」である。

ひどく残念で嘆かわしく思わずにはいられないところに、叔母である人が地方から上京してきていた家に行ったところ、


「いとうつくしう  生ひなり    けり」など、あはれがりめづらしがりて、帰るに、

うつくしう=形容詞「うつくし」の連用形の音便化したもの、かわいい、いとしい、かわいらしい

生ひ成る=ラ行四段、成長する

に=完了の助動詞「ぬ」の連用形、接続は連用形

けり=詠嘆の助動詞「けり」の終止形、接続は連用形。「けり」は過去の意味で使われることがほとんどだが、①和歌での「けり」②会話文での「けり」③なりけりの「けり」では詠嘆に警戒する必要がある。①はほぼ必ず詠嘆だが、②③は文脈判断

あはれがる=ラ行四段、めでる、いとおしむ、ひどく悲しく思う。形容動詞「あはれなり」の語幹(あはれ)に接尾語「がる」が付いて動詞化したもの。

めづらしがる=ラ行四段、珍しがる、珍しいと思う。形容詞「めづらし」の語幹(めづら)に接尾語「がる」が付いて動詞化したもの。

「たいそうかわいらしく成長したなあ。」などと、いとおしみ、珍しがって、(私が)帰る時に、


「何を  奉ら  まめまめしき物はまさなかり    

か=疑問の係助詞、結びは連体形。係り結び

奉る=ラ行四段、謙譲語、差し上げる。動作の対象(差し上げられる人)である作者を敬っている。

む=意志の助動詞「む」の連体形、接続は未然形。係り結びの結びの部分となっている。

まめまめし=形容詞シク活用、実用的だ、真面目だ、誠実だ

まさなし(正無し)=形容詞ク活用、よくない、思いがけない

な=強意の助動詞「ぬ」の未然形、接続は連用形。「つ・ぬ」は「完了・強意」の二つの意味があるが、直後に推量系統の助動詞「む・べし・らむ・まし」などが来るときには「強意」の意味となる

む=推量の助動詞「む」の終止形、接続は未然形。推量系統の助動詞があるため直前の「な」は「強意」である。

「何を差し上げましょうか。実用的なものは、つまらない(よくない)でしょう。」


ゆかしく    たまふ  なる物を奉ら  」とて、源氏の五十余巻、櫃(ひつ)に入りながら

ゆかし=形容詞シク活用、心がひきつけられる、見たい、聞きたい、知りたい

し=サ変動詞「す」の連用形

たまふ=補助動詞ハ行四段、尊敬語、動作の主体(欲しがっている人)である作者を敬っている。

なる=伝聞の助動詞「なり」の連体形、接続は終止形(ラ変は連体形)。「断定・存在」かあるいは「伝聞・推定」の助動詞なのかは文法上判断できず、文脈判断するしかない。「断定(~である)」と「存在(~にある)」は文脈的に合わない。また、音声を根拠に推定して「~だろう」と訳す「推定」も合わない。伝聞:「(伝え聞いて)~だそうだ。~ということだ。」

む=意志の助動詞「む」の終止形、接続は未然形

ながら=接続助詞、次の①の意味で使われている。
①そのままの状態「~のままで」例:「昔ながら」昔のままで
②並行「~しながら・~しつつ」例:「歩きながら」
③逆接「~でも・~けれども」 例:「敵ながら素晴らしい」
④そのまま全部「~中・~全部」例:「一年ながら」一年中

欲しがっていらっしゃると聞いている物を差し上げましょう。」と言って、源氏物語の五十余巻を、櫃(ふたの付いた大型の木箱)に入ったまま、


在中将・とほぎみ・せり河・しらら・あさうづなどいふ物語ども、ひと袋とり入れて、得て帰る心地のうれしさ  いみじき  

ぞ=強調の係助詞

いみじ=形容詞シク活用、(いい意味でも悪い意味でも)程度がひどい、甚だしい、とても

や=詠嘆の間投助詞、「…だなあ、…ことよ」

「在中将」「とほぎみ」「せり河」「しらら」「あさうづ」などといういろいろな物語を、(叔母が)一つの袋に入れて(くださった。それらを)もらって帰る気持ちの嬉しさといったらたいへんなことよ。

続きはこちら更級日記『物語(源氏の五十余巻)』(2)解説・品詞分解「はしるはしるわづかに見つつ、~」

問題はこちら更級日記『物語(源氏の五十余巻)』(1)問題1

更級日記『物語(源氏の五十余巻)』まとめ