源氏物語『桐壺』(2)解説・品詞分解(光源氏の誕生)

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問題はこちら源氏物語『桐壺』(2)問題1

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登場人物
桐壷帝(帝)
桐壷の更衣
桐壷の更衣の父である大納言
その大納言の北の方(妻・桐壷の更衣の母)
清らなる玉の男御子・この君(若宮・弟君・光源氏)
右大臣の女御(弘徽殿の女御)
右大臣の女御の御腹・一の御子(第一皇子・のちの朱雀院)


父の大納言は亡くなりて、母北の方  なむ  いにしへの人    よしある  て、

北の方=名詞、妻

なむ=係助詞

いにしへのひと=昔気質の人、品詞分解すると「いにしへ/の/ひと」。

の=格助詞、同格、「昔気質の人で由緒正しい家柄の人であって、」

由あり=ラ変、①由緒正しい家柄の②教養のある、ここでの意味は①か②微妙なところ、連体形なのは直後に「人」が省略されているから、

に=断定の助動詞「なり」の連用形、接続は体言・連体形

父の大納言は亡くなって、母である大納言の北の方(妻)は、昔気質の人で由緒正しい家柄の人であって、


うち具(ぐ)し、さしあたりて世のおぼえ  はなやかなる御かたがたにもいたう劣らず、何事の儀式をももてなし給ひ  けれど、

うち具(ぐ)す=サ変、備わる、そろう、従う、備える、「うち」の部分は接頭語であり訳す際にはあまり気にしなくてもよい

世のおぼえ=世間の評判、「世/の/おぼえ」

はなやかなり=形容動詞ナリ活用、はなやかである、栄えている、きわだっている

いたう=形容詞ク活用、良い意味でも悪い意味でも程度がはなはだしい、「いたく(連用形)」が音便化して「いたう」となっている

給ふ=補助動詞ハ行四段、尊敬語、動作の主体(儀式の支度を整えた人)である桐壷の母を敬っている。

けれ=過去の助動詞「けり」の已然形、接続は連用形

両親がそろっており、現在世間の評判も華やかである他の方々(女御・更衣たち)に比べてもあまり劣ることなく、どんな儀式をも、とり行いなさったけれども、


とりたててはかばかしき  後見(うしろみ)    なけれ  

はかばかし=形容詞シク活用、①はかどる②きわだっている③頼もしい、ここでは③の意味

後見(うしろみ)=世話をする人、後見人。当時は社会的に実力のある父や兄などの男性が「後見」になるが、桐壷には母が後見となっている。なので、宮廷での立場が弱い。

し=強調の副助詞、強調の意味なので訳す際には気にしなくて良い。だから、「後見しない」ということではなく「後見無し」というような意味なので注意。

なけれ=形容詞「無し」の已然形、ここの「けれ」は助動詞ではなく形容詞「なし」の已然形の一部であることに注意。

ば=接続助詞、直前が已然形だから①原因・理由「~なので、~から」②偶然条件「~ところ・~と」③恒常条件「(~する)といつも」のどれかであるが、文脈判断をして①の意味でとる。ちなみに、直前が未然形ならば④仮定条件「もし~ならば」である。

特に取り上げて、頼れる後見人(後ろ盾)がいないので、


事とある時は、なほ  よりどころなく  心細げなり

なほ=副詞、やはり

よりどころなし=形容詞ク活用、頼る所がなく。拠り所=頼る所

心細げなり=形容動詞ナリ活用、心細い、頼りなくて不安だ

重大な用事がある時は、やはり頼る所がなく心細そうである。


前(さき)の世にも、御契り    深かり  けむ

前(さき)の世=前世

御契り=名詞、約束、ご縁

や=疑問の係助詞、結びは連体形、

けむ=過去推量の助動詞「けむ」の連体形、接続は連用形。前の係助詞「や」を受けて連体家になっている。文末に来ると「過去推量・過去の原因推量」だが、文中に来ると「過去の伝聞・婉曲」となることをもとに識別する。

前世においても(帝と更衣は)ご縁が深かったのだろうか、


世になく  淸らなる、玉の男御子(をのこみこ)さへ生れ給ひ  

世になく=世に比類がない、またとない。「世/に/なく」

清らなり=形容動詞ナリ活用、美しい、気品があって美しい

さへ=副助詞、添加「…までも」

給ふ=補助動詞ハ行四段、尊敬語、動作の主体(生まれた人)である皇子(光源氏)を敬っている。

ぬ=完了の助動詞「ぬ」の終止形

世に比類がないほど美しい玉のような皇子までもがお生まれになった。


いつしか心もとながら    給ひて、急ぎ參ら  御覽ずるに

いつしか=副詞、①いつ…か②いつのまにか③はやく…(したい)、ここでは③の意味

心もとながる=ラ行四段、待ち遠しく思う、じれったく思う

せ=尊敬の助動詞「す」の連用形、接続は未然形。動作の主体(待ち遠しく思っている人)である帝を敬っている。すぐ下に尊敬語が来ていないときは「使役」だが、尊敬語を伴うときは文脈判断。「給ひ」と合わせて二重敬語となっている。

参る=ラ行四段、謙譲語、動作の対象(参られた人)である帝を敬っている。

せ=使役の助動詞「す」の連用形、接続は未然形、直後に尊敬語が来ていないので「使役」の意味しかありえない。

御覧ず=サ変、御覧になる、ここでは連体形となっている。動作の主体である帝を敬っている。

(帝は)早く(生まれた皇子を見たい)とじれったく思いなさって、急いで(その皇子を宮中へ)参らせて御覧になると、


珍(めづ)らかなる、児(ちご)の御かたち  なり

珍(めづ)らかなり=形容動詞ナリ活用、珍しい、普通とは違う

御かたち=名詞、顔立ち、姿、容貌

なり=断定の助動詞「なり」の終止形、接続は体言・連体形

珍しいほどの(美しさである)皇子のお顔立ちである。



一の御子は、右大臣の女御御腹  て、よせおもく、

一の御子=桐壷帝の第一皇子、朱雀院のこと

右大臣の女御=右大臣家出身の女御、弘徽殿の女御のこと、桐壷の更衣と違って後見がしっかりしている。

御腹=名詞、その女性の腹から生まれた子

に=断定の助動詞「なり」の連用形、接続は体言・連体形

よせ=名詞、信望、人望。後見のない人物に対してはよせが軽いという

第一皇子は、右大臣の娘(弘徽殿の女御)がお生みになったお方で、世間の信望も厚く、


疑ひなき儲の君(まうけのきみ)と世にもてかしづき  聞ゆれど、

儲の君=名詞、皇太子。儲け=設けること、準備のことであり、次期皇位の予定者ということである

もてかしづく=カ行四段、「もて」は接頭語なので気にする必要はない
かしづく=カ行四段、大切にする、大切に養い育てる、大切にお世話する

聞こゆ=補助動詞ヤ行下二、謙譲語、動作の対象(大切にされている人)である第一御子のことを敬っている。ちなみに、直後に逆接の接続助詞「ど」があるため已然形となっている。

疑いもなく皇太子だと世間では大切にし申し上げているけれども、


この御にほひには、並び給ふ  べくもあらざり  けれ  

御にほひ=名詞、色が美しく映えること、艶のある美しさ。嗅覚ではなく視覚的なことを意味しているので注意。

給ふ=補助動詞ハ行四段、尊敬語、動作の主体である第一皇子を敬っている

べく=可能の助動詞「べし」の連用形、接続は終止形、「べし」は推量・意志・可能・当然・命令・適当の意味があるので文脈判断が必要。

ざり=打消しの助動詞「ず」の連用形、接続は未然形

けれ=過去の助動詞「けり」の已然形、接続は連用形

ば=接続助詞、直前が已然形だから①原因・理由「~なので、~から」②偶然条件「~ところ・~と」③恒常条件「(~する)といつも」のどれかであるが、文脈判断をして①の意味でとる。ちなみに、直前が未然形ならば④仮定条件「もし~ならば」である。

この(光源氏)のお美しさにはお並びになれそうにはなかったので、


おほかたやんごとなき御思ひて、この君をば、私物(わたくしもの)おぼほし  かしづき  給ふ限りなし

おほかた=副詞、一般に、およそ、ひととおりに

やんごとなし=形容詞ク活用、捨ててはおけない、貴重だ、格別だ

に=断定の助動詞「なり」の連用形、接続は体言・連体形

私物=名詞、私有物として大切にするもの、内々で大事にするもの

おぼほす=サ行四段、思うの尊敬語、お思いになる

かしづく=カ行四段、大切にする、大切に養い育てる、大切にお世話する

給ふ=補助動詞ハ行四段、尊敬語、動作の主体である帝を敬っている、ちなみに直後に体言「事」があるため連体形である。

限りなし=形容詞ク活用、果てしがない、この上もない、甚だしい

(第一皇子に対しては)一通りの大切になさるという程度のご寵愛であって、この弟君(光源氏)をご秘蔵の宝物のようにお思い大切になさることはこの上もない。

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